駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

兄の居ない故郷

2013年08月19日 | 身辺記

                

 八月のお盆には里帰りをする。両親の墓参りをするのだが、新しく彫られた兄の名前がある。やがて三年になるのだが、未だに信じられない。

 「おー、よう来た」。と出てきそうな気がしてならない。そう思う間に兄によく似た甥が「おじさんようこそ、ゆっくりして下さい」。と出てくる。

 「似てきたな」。

 と言うと微苦笑しながら「息子が来年大学受験ですわ、どこぞ入いってもらわな」と言う。

 「大丈夫、なんとかなるよ」と言おうとして、未だ中学性くらいに思っていたので、びっくりして声が擦れてしまう。

 お茶と御菓子を頂きながら、兄嫁や姪達とひとしきり話をして、お暇する。

 毎年少しずつ、故郷の街は変わって行く。もう二十年前からアパートに変わっているのに、いつも三角通りの曲がり角に来ると確か自転車屋があったはず、おじさんがいつも自転車を店先で修理していたのにと、帰らぬ昔を思い出す。

 自分は変わらないようなつもりでいるのだが、変わっているのだ。いつまでもはないと思い知りながら、それでもいつも墓参りをすると、自分と自分の家族の無事をお願いしてしまう。

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