マーガレット・サッチャー元英国首相のドキュメンタリーを見た。引退後四半世紀、存命中であるがメディアへの露出はなくなり、まだ直接彼女に接したジャーナリストが健在で、記録の好機を捉えている。
私自身も彼女の現役時代を記憶する者として、個人的な感想を抱きながら見た。当たり前かもしれないが、メリルストリープの演技を圧倒一蹴している。鉄の女と呼ばれるに相応しい人であったようだ。直に接した記憶を辿りながら論評する英国ジャーナリストの優れた力量と公平な視点も感じた。
振り返れば権力の常であるが、十一年半はやや長過ぎたのだろう。夫の助言もあってか潔い引き際であったが有終の美ではなかった。
上流階級の出身ではないせいか余裕とユーモアのセンスに乏しかったが、私には紛れもなくイギリス文化の産んだ人物という印象が強い。
人物の評価は歴史的に為されると言われるが、儂はどうなっているというリチャード三世のうめき声も聞こえる。ドキュメンタリーは小説を凌駕できるだろうか。ストーリー性を好む受け手の心に届く記録をと思ったことだ。