「ほら、先生もおっしゃるでしょ」。「いつも言ってるじゃないの」。
私の指導を復唱するのでは不十分なんですよ。何というか、手が出ないと介護にならないんですよ、とまでははっきり言えないことが多いのだけれども、口先介入だけでは効果が少ない。
「駄目でしょ」。「いつも言ってるでしょ」。と言うのは、頼りない財務相以下の口先介入効果で、沈み行く舟の浸水をひしゃくで汲み取っているようなものだ。
そうした状況と関係にはそれなりの経緯があり、ケアマネージャーと主治医が協力しても改善させるのは容易ではない。勿論、色々な家族があり、知識不足や介護不慣れの場合もある。しかし、なにはともあれ、恋人の愛撫と似ても似つかぬようでも、手で触れるというのは最強の介護なのだ。たとえ義務感が大半でもいくらかの親しみというか情なくしてはできないし、実際に何かが手のぬくもりから伝わっているように思う。
寝たきりや寝たきり予備軍の患者さんを診にゆくと、そこはかとなくわかる。介護者が無愛想でも清潔が保たれている患者さんは、こうした表現は適切ではないかもしれないが、長持ちする。米作りではないが手が入っているのだ。稀ではあるが言葉は出ていても診察時臭うような場合は難しく厳しくなる。だからどうとは、簡単には言えないが、巡り巡るものを感ずるような気もすると申し上げねばなるまい。
眼は口ほどにと言うが、手は口よりも助けになることがある。