駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

最前線の感覚

2011年08月26日 | 医療

 

  昨日、胸部疾患の勉強会の後、総合病院の部長と話していて、私と診療感覚が微妙にずれているのを感じた。T先生はよく勉強されていて、専門以外のこともいろいろご存じなのだが、コスト感覚が乏しい。つまり、薬や検査の値段をあまりご存じないのだ。総合病院では医師は会計から遠く、今日この患者はいくら払うんだろうかという所まで気が回らない。それよりも、最新最前線の検査を漏れなくやり、症例報告しても立派に通用するデータを揃える方に頭が向きがちなのだ。私が部長だったのは、もう二十年以上も前のことで今は多少変わってきているかも知れないが、基本的なところでT先生の診療姿勢は良く理解できる。

 これが大学教授となれば、すべての教授がというわけではないが、もっと鮮明に研究重視、完璧重視の姿勢になる。残念ながら、町医者から病院の部長そして大学の教授という逆コースはないので、町医者の感覚は町医者に留まることが多い。尤も、現場最優先で中枢をわかっていないと誹謗する、時々そういう医者が居る、のは行き過ぎで相互の思考を融合させる智慧が何よりも必要だ。政策に寄せて言えば、方針を決めるには鳥瞰が重要だが虫の目はそれを補完するものとして欠かせない。

 そういう意味で、勉強会や講演会の後で忌憚のない意見を交換するのは有意義なことだと思われる。特に我々のような卒後四十年生は教授、院長や部長にも臆せず物が言えるので、大切な役回りだと思っている。

コメント (2)
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