駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ニャロメ!

2011年08月07日 | 診療

  

 ここに書くのは微妙な問題だが、複雑な心境なので物言わぬは腹ふくるるわざなりと書いてみよう。

 私は開業以来ずっと往診してきた。今までに自宅で看取った患者さんは百二十名を越える。なぜ往診するか、それは患者さんと患者さんの家族から要望があるからだ。総合病院の社会的入院(自宅で介護出来ないので入院させておく)がなくなったので、いろいろな受け入れ施設は増えたけれども、自宅の寝たきり患者(ほとんどが高齢者)は結構居る。今は昔より共働きが多いから、介護保険をいろいろ利用しても、自宅での高齢者の介護は大変なのだ。自宅で寝たきり患者を介護していれば、自分で言うのも変だが往診してくれる医者は重宝なのだ。

 ところが、往診しない内科系医師も三分の一くらい居る。なぜ往診しないか。これは邪推ではなく本当のところだと思うが、負担だからしないのだと思う。どうしたって末期になれば、時間外に電話が掛かってきたり往診したりで、それを当然と覚悟していなければ心身の負担になる。覚悟している私でさえ、たとえ月二三回でも、いつ呼ばれるかわからないというのはストレスになっている。

 往診している患者さんの殆どは、病院からの紹介か、当院に通院していて歩けなくなった(骨折、認知進行、脳梗塞、末期がん・・)患者さんだ。

 年に一人くらい、どうもはっきりしない家族から往診依頼が受付にある。受付の女の子が内線でどうしますかと聞いてくる。来るものは拒まずでやっているので、詳細を聞かないで「ああ、いいよ」。と言うと早速、家族がやってくる。握りしめていた紹介状を受け取ると、なんだすぐそばの医院ではないか。歩行困難で通院が大変になった。私は往診しないので、先生のところでお願いしたいと書いてある。癌が進行して動けなくなった患者さんや認知症で手のかかる患者さんが多い。

 正直、むっとする。往診は趣味でやっているわけではない。わしよりうんと若いのに、自分が長く診ていた患者さんくらい自分で最後まで診ろと怒鳴りたくなるが、引き受けてもらえるかどうかと固唾を飲んで見守っている家族を見ると「ああ、いいよ」。と言ってしまい、おまけに「ご紹介ありがとうございます」などと返事を書いてしまうのだ。あーあ、ニャロメ!。

 まだまだ往診ではほかにもいろいろ涙がちょちょ切れることがあるのだ、ベシ!。

 

コメント (2)
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