新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

頼朝さんはかっこよかった!(その2)

2011-07-29 08:58:24 | 旅行記

頼朝さんはかっこよかった!(その1)」のつづきです。

昨夜のNHKクローズアップ現代は、「炭坑(ヤマ)が“世界の記憶”になった」と題して、日本で初めてユネスコの「世界記憶遺産」に選ばれた、元炭鉱夫・山本作兵衛さんが描いた記録画や日記を取り上げていました。
これを観て、なんという奇遇かと思いました。
それというのも、私が5月26日の記事「5月25日は『《記憶》の日』かもしれない」で引用した西日本新聞の記事、

政府申請に限る世界遺産と違い、(世界記憶遺産は)自治体や個人でも申請が可能。条約に基づいて登録する世界遺産と違い、登録の判断基準が不明確などとして、文部科学省は積極的に申請を行ってこなかったが、著名な資料の登録が続いたことなどから姿勢を転換。11日、藤原道長が書いた日本最古の自筆日記とされる「御堂関白記」など国宝2件を申請すると発表したばかりだった。

に出てくる国宝「御堂関白記」の現物を「よみがえる国宝」展で観てきたばかりだったからです。

110729_1_1

千年近く前の人の日記が、こうしてきれいに残っていることって、すごいことです。
もちろん、偶然残っていたはずもなく、子孫たちが丁寧に手入れをし、意志を持って後世に伝えてきたから、残っているわけです。
ですから、「よみがえる国宝」展の冒頭の展示品が、「ちり取り」であることは象徴的で、良いアイデアだったと思います。

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このちり取りは、そんじょそこらのちり取りとはわけが違っていまして、展覧会のサイトの説明によりますと、

ちりとりの裏面に、第十四代・冷泉為久(1686~1741)が御新文庫の塵取としてお作りになったものなので、古物ではあるが粗末にしてはいけないと、記されています。御新文庫は勅封が解かれた1721年以降に建てられたものと考えられるので、このちりとりはすでに250年以上も前に作られたものです。年季のあるちりとりではおそらく現存最古でしょう。なによりも、当主がちりとりを自作し、そのことをちりとりに書き留めて現在まで伝えられて来た事実に驚かされます。このことは、冷泉家歴代が文庫内を清潔に保つことをいかに大切にされてきたかを物語っています。

だそうです。

もちろん、収蔵庫を掃除するだけでお宝を後世に伝えられるはずもなく、虫干し(曝涼)やら修復やらが必要で、修復には高い技術とお金が必要です。

この「よみがえる国宝」展は、後世に恥じることのない修復者の技術と気概だけでなく(どこかの国では、カッコだけ整えばOKというオカラ工事や作業がお盛んなようですが…)、修復にお金を出した檀家や氏子、篤志家の思いや心意気が伝わる良い展示でした。子どもたちにも判るように、新米学芸員が衣魚(しみ)から文化財の保存や修復を教えてもらうというパネル説明があちこちに配されていることにも好感を覚えました。

   

さて、私を福岡まで引っ張ってきた「源頼朝像」にもう一度触れておきましょう。

110729_1_3この肖像画を教科書や事典で見た印象から、理由もなく30cm四方くらいの大きさだと思い込んでいた「源頼朝像」、実際は等身大で、かなりデカイ

しかも、真っ黒の無地だと思っていた上着=縫腋袍(ほうえきのほう)には、実は同じで模様が織り込まれてた(描き込まれていた)ことが、これまた驚きでした。

そして言わずもがなのお顔

端正で、として、知性威厳が伝わってきて、あらまほしきリーダー像って感じ

そして、シンプルな構図と絞り込まれた色彩、これぞ日本人の美意識の集大成ではなかろうかとまで思ってしまいます。

よみがえる国宝」のサイトの説明では、一緒に展示されていた「平重盛像」と共に、

肖像画の最高傑作として世界的な評価の高い両像は、江戸時代の虫払定(むしはらいさだめ)でもわかるように、神護寺の寺宝として大切に守り伝えられてきました。昭和54年の修理により、装束部分の全面を覆っていた白っぽいもやのようなくすみがみごとに除去され、美しい黒色の地と文様がより鮮明によみがえりました。
修理の理念、補彩の方針、事前の調査、観察・経験の蓄積と科学による整理、技法や素材の熟知、肌上げの技術、電子線劣化絹による補絹、報告書の刊行等々、近代装潢修理の様々な課題と成果の結実を物語る代表的な修理です。

だそうです。

ただ、「平重盛像」の方は、お顔の辺りが損傷している他、全体的にまだ薄ぼんやりしていました。
もしかすると、時の鎌倉政権のとかつてのライバルに敢えて差をつけたのかもしれませんな。

それにしても、「源頼朝像」。素晴らしい作品でした。一生に一度は観ておくべき作品の一つだと断言してしまいます。

よみがえる国宝」での「源頼朝像」の展示はあさって7月31日(日)までデス。ご興味のある方はお急ぎください

ただ、今週末はかなり混みそうな予感が…
平日だった昨日でさえ、リタイアされたらしき方々が大勢来館していて、作品によっては「近くでじっくりのんびり観る」ことができませんでしたから。
でも、「源頼朝像」と「平重盛像」は大きいし、かなり広いコーナーに展示されていますので、離れたところからしみじみと鑑賞するのもオツなものかもしれません。

つづき:2011/08/05 頼朝さんはかっこよかった!(その3)

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