「『節電の夏』がスタート」で予告したとおり、美術館と映画館
のハシゴをしてきました。
まずは美術館から。
行ってきたのは、 サントリー美術館で開催中の「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」展です。
ちょっと長いですが、サイトから引用します。
日本の古代史において鳳凰と獅子は、特別な存在です。鳳凰は優れた天子が世に現れる兆しとして、古代中国で生み出された空想の鳥であり、対する獅子は、日本に棲息しないライオンを原型とし、やはり中国から唐獅子という半ば空想上の動物として伝わりました。いずれも宗教・儀礼や民俗・芸能に広く深く取り込まれ、それぞれ祝儀にふさわしい高貴なシンボルとして、繰り返し絵画や工芸の意匠となってきました。鳳凰と獅子の多岐にわたる造形表現は、日本文化全般におけるハレの場面と、常に密接に関わりあいながら、その不滅の生命を今に伝えていると言えるでしょう。 この展覧会では、鳳凰と獅子という瑞鳥、霊獣のイメージの展開に注目します。高貴な姿の鳳凰や威厳あふれる獅子の変遷を、屈指の名品によってたどりながら、人々が鳳凰や獅子に託した祈りや、豊かな空想のはばたきを感じていただければ幸いです。
まさしく、人々の祈りや空想のはばたきを感じることができましたゾ
私、以前から鳳凰と獅子には漠然とした関心を持っていまして、このブログでも、鳳凰は去年3月の記事「寒桜咲く上野で『とうはく三昧』(その4)」で、獅子には09年10月の記事「ライオン、狛犬、獅子、そしてAmazon」で触れていました。
そんなわけで、私にとってはかなり興味深い展覧会でしたし、出展作品も素晴らしく、非常に満足度の高い展覧会でした
ただ、吉祥の霊獣といえば、鳳凰、獅子に加えて、亀と麒麟も忘れちゃいかんと思うですが…
でも、これを取り上げれば鶴の取り扱いが難しくなる亀はともかくも、麒麟は場所が場所だけに、それは難しいことかもしれません…
その辺りは「大人の事情」ということで、深く追究しないことにします。
私が「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」展を鑑賞した今日の昼前、予想どおり、館内はほどほどの人出で、観たい作品をじっくりと、そして行ったり来たりしながら、満足ゆくまでじっくりと作品を観ることができました
ところが、観客の大部分を占める女性たち(占有率は80%を優に超えていました)が結構やかましい 木の床をコツコツとヒールの音を響かせたり、財布につけた鈴をチリンチリン鳴らしながら歩く、ケータイの呼びだし音を鳴り響かせる、説明を音読する、世間話をする、、、なんてのは美術館でしばしばでくわす困った光景ですが、きょう一番の困った「おばさま」は、ツレのお嬢さんと「滑走路をカメの大群が横断、便の運航に支障 米JFK空港」というニュースを熱く
語っていました。
6月29日にニューヨークのJ.F.ケネディ空港で、近所に住んでいる亀150匹が産卵のために空港の滑走路を横断したことから、一部の滑走路を閉鎖するなどして、運航に支障が生じたというニュースです。
このときは、美術館で世間話をしてもらいたくない と思ったものでした。
でも、仮に、聖獣つながりでニューヨークの亀の話に至ったとしたら、展示に関連した会話と言えないこともありません…。
う~む、、、、
でも、やはり、美術館では小さな声で話してもらいたいものです。
さて、肝心の展示。いやぁ~、良かった、楽しかった
あえて比べれば、獅子系(?)の作品に好みのものが多かった気がします。
展示されていた狛犬は、威厳に満ちていたり可愛らしかったりして、どれも「お持ち帰り」希望
とりわけ清浄光寺(遊行寺)からやってきた「獅子鼻」(こちらのサイトが参考になります)が、展示方法ともあいまって、激しくcuteでした。
cuteといえば、彭城百川の「天台岳中石橋図」に描かれた獅子が出色
でした。困ったような表情で石橋の上に寝そべった獅子が川面をぼんやりと見ている図で、獅子の頭には大きな牡丹の花の飾り
「獅子には牡丹がつきもの」とはいえ、何という斬新な表現なのでしょうか
「誰につけてもらったの? 自分でつけたの?」と、獅子に聞いてみたくなる作品でした。
一方、鳳凰系では、やはりこちらの作品でしょう
伊藤若冲の「旭日鳳凰図」は、その絵の前に立ったとたん、「ふぉ~~
」とため息しか出ませんでした。
バックライトでも仕込まれているのではなかろうかとさえ思ってしまうほどの強烈なオーラ
が発散されていました。
この作品を観るのは09年後半に開催された「皇室の名宝 1期」(記事はこちら。ただしこの作品に関する記述はありません)以来2度目ですが、前回を遙かに上回るインパクトでした。もっとも、「皇室の名宝 1期」のときは、同じ若冲の「動植彩絵」全30幅なんて夢の空間があったわけですから…
この「旭日鳳凰図」の隣に展示されていた神坂雪佳(こちらとこちらほか、何度か書きました)の「白凰図」は、かなり濃厚な若冲のものとは対称的にクールで、これまたステキ
でございました
そうそう、鳳凰系で忘れちゃならない作品がありました
鹿苑寺金閣のてっぺんに置かれていた鳳凰です
金閣が焼失した1950年当時、この鳳凰は損傷が激しいということで、屋根から外されていたのだそうで、そのお陰で創建当時の金閣を伝える唯一の遺物になっているのだそうな。
でも、ちょっと離れた場所に展示されていた平等院の鳳凰のレプリカと比べると(何度か往復しました)、頭でっかちでバランスが悪いし、造りもシンプルというか結構雑…。
しかも、金閣の屋根から外されたまま、修復されていないというのはどうしたことだ
もう一つ気になった「鳳凰」がこちら。
南法華寺(壺阪寺)に伝わる奈良時代の「鳳凰文磚」です。
「磚(せん)」というのは、こちらのサイトによれば、「焼成煉瓦」のことだそうな。
それはともかく、この作品を観て思ったのは、「角川書店のマークだ」ということでした。
シンプルかつバランスのとれた素晴らしい意匠だと思います。これが1200年以上も前のものとは信じられませんゾ
観てきたことを思い出しながらこの記事を書いていると、観た直後に感じた以上に楽しい展覧会だったと思い直しています。
会期中にもう一回行ってみようかなとさえ思っています。
展示替えが頻繁にあることに加え(お出かけの節はこちらでご確認を)、こんなのをいただいてきましたから
開館50周年感謝企画ということで、
「開館50周年記念『美を結ぶ。美をひらく。』Ⅱ 不滅のシンボル 鳳凰と獅子」展の入場券をご購入いただいた方には、本展並びに同記念展Ⅲ、IVのうち、お好きな展覧会に、無料で1回ご招待します!
なんだそうです。
そんなわけで、きょう、入場券を購入したとき、上の「招待券
」をいただきました。
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」展が終わるまで、あと3週間あります。
どうしましょうか…