「歩くのは好きですか」
「はい、好きです。あなたは好きですか」
「はい、私も好きです」
まるで中学校の英語で習った疑問文そのままの会話だが、『四月の雪』でヨン様と私の大好きなソン・イェジンは、こういう会話をくり返す。
それに比べて、緒方明『いつか読書する日』では、30年間、お互いに思いを秘めてきた男女がいて、男(岸部一徳)が
「今まで思っていたことをしたい」
と言うと、
「全部して」
なんて、田中裕子が言うんですぜ。
ゾクッとしますよ。
だからといって、『四月の雪』の疑問文会話が悪いわけではない。
それがホ・ジノ監督のスタイルだから。
ホ・ジノ監督は少ないセリフと俳優のちょっとした演技で、登場人物の心の傷の深さを表現するのが実にうまい。
始まって30分ぐらいのヒリヒリするような描写は素晴らしい。
しかし、セリフの少なさ、説明不足はマイナスにもなる。
ベッドでいたした後、ソン・イェジンが「これから私たちどうなるの」と言うのに対し、ヨン様はなぜか何も答えないんですな。
そんな時、嘘でも「君を離したくない」とか「妻と別れる」とか言うもんじゃなかろうか。
未経験ゆえ、よくわからないが。
案外と、いつでも都合の良い時に寝てくれる女を手に入れました、という話なのかもしれないと思いもするが、しかしヨン様は鼻水を垂らしながら泣くんですよ。
こいつ、いったい何を考えとるんじゃ。
監督の意図としては、観客の想像力にまかせたいから説明的なセリフはなるべく避けているのだろう。
それにしても、男のほうの気持ちがほんとわからない。
ベッドを初めてともにした後も、しょっちゅう会うわけではないみたいだし、妻に忠義だてする必要はないからさっさと離婚すればいいし、他の女と遊ぼうと妻は何も言わないはずだ。
単に無神経なだけか。
前作の『春の日は過ぎゆく』でもラスト、女のあまりにもの無神経さには腹が立ちましたもんね。
で、ソン・イェジンである。
あの清純そのもののソン・イェジンがベッドシーンを演じるとは!
童顔のチョン・ドヨンも『ハッピーエンド』で裸になったし。
うれしいやら悔しいやら……。
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