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三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ベン・ゴールドエイカー『デタラメ健康科学』(1)

2014年03月14日 | 問題のある考え

私の知り合いに、病気になってもなるべく医者にはかからず、食事療法によって治すという人がいる。
その食事療法というのが代替療法というか、疑似科学っぽくて、そのことを言ったら、「疑似科学という言葉で何でも否定するのは間違いだ。現代科学が全てを解明しているわけではない」という返事。

たしかにそのとおりで、どんな馬鹿げたこと、たとえば宇宙人に誘拐され、宇宙人と性交して妊娠したといった話にしたって、100%あり得ないとは言えない。
実は私も疑似科学が好きなので気になってしまう。
だもんで、はまってしまいそうだから、私は批判的な本しか読まない。

ベン・ゴールドエイカー『デタラメ健康科学』は副題が「代替療法・製薬産業・メディアのウソ」とあるように、デトックス、ホメオパシー、サプリメント、コラーゲンなどのあやしさ、製薬会社、メディアの実態を暴いている。

代替療法には漢方、鍼灸、指圧といった東洋医学から、カイロプラクティック、ホメオパシー、気功など有効性が実証されていないものまで含まれる。
『デタラメ健康科学』によると、腰痛のための鍼治療は統計的に有意ではないし、漢方医学の研究論文を調べたところ、ただのひとつも否定的な結果は公表されていないそうだ。

なぜ代替療法みたいな怪しい医療法が私たちを惹きつけるのか。
医療への不信、代替療法は自然で身体にいいという誤解、知的な感じの専門用語で飾りたてたわかりやすい説明(正しいわけではないが)、手っ取り早くてお手軽、といったことがあると思う。
代替療法を提供する側がウソをついているかというと、ベン・ゴールドエイカーによれば、ウソつき呼ばわりされるほどの悪意もなければ知力もない。

デトックス(体内毒素)を排出するというインチキ商品がある。
病気を治すには体内の毒素を排出しないといけないと昔から信じられていて、ヨーロッパでは瀉血が唯一の治療法と言っていいぐらいだったし、断食や沐浴も体の浄化が目的である。
現代でも、体内の毒素を排出して健康になりますというデトックス商品が各種販売されている。
では毒素とは何かとなると、説明できないし、科学的根拠があるわけではない。

ベン・ゴールドエイカーによると、デトックスが好きな人は日常生活で儀式を行なうのが好きな人である。

浄化と贖罪のテーマが儀式にくり返し現れるのは、人間がいろいろな事情のせいで悪いことをしてしまうからだ。そういう事情が新たに増えるたびに新しい儀式が考えだされる。(略)
先進国の人間は極端なまでに物欲にふけっているため、その罪を清めて購いたいと思っている。薬物や酒、体に悪い食べ物や、いろいろなぜいたく品を私たちは口に詰めこむ。いけないことだとはわかっているので、そのつけが回ってこないように何かの儀式で逃れさせてほしい。


病気になるのは悪いことをしたからであり、悪業によって作られた毒素を排出することで健康になるという考えは、苦行によるカルマの浄化と同じ理屈だと思う。
酢を飲んだら花粉症が治ったと聞き、私も一年間、酢を飲んだことがある。
酢は飲みやすくはないが、でもこんなに苦しい思いをするんだから効果があるかもと思って、我慢して酢を飲み込んだものです。(花粉症は相変わらずです)

ホメオパシーのレメディという薬(砂糖と水を混ぜたもの)を作るために水でただ薄めるだけでなく、容器を強く振り、台に叩きつける。
これも儀式の一種で、こんなことで治療効果が生じるはずはないが、何となくありがたく感じるものである。

では、なぜ代替療法で治るか?
「プラセボ効果」か「平均への回帰」だというのがベン・ゴールドエイカーの説明。
「プラセボ効果」とは偽薬効果で、水なのに「薬だ」と言って飲ませたら病気が治るということ。
医者が何を言い、患者が何を信じるかが治療に影響するし、医者が何らかの診断を与えるだけで(たとえウソの診断であっても)患者の状態が良くなることがあるそうだ。
信仰することでご利益(健康、仕事、人間関係などの改善)があるとしたら、これもプラセボ効果なのかもしれない。

「プラセボ効果」には患者へのメリットがありそうだ。ただし裏目に出る場合もあるので注意が必要である。何かといえば、自信と信頼感にあふれる説明で人に病人の役割を与えてしまい、その人の考えかたや行動に悪影響を及ぼすおそれがある。

下手にご利益があると「考えかたや行動に悪影響を及ぼす」のは宗教でも言えることです。

もちろん代替療法の信奉者はプラセボ効果だとは認めない。

患者との信頼関係や儀式ではなく、具体的なメカニズムによって測定可能な作用が現れて患者は治るのだと主張する。
でも、本当に測定されているのだったら、代替療法とは言わない。

「平均への回帰」とは、病気にはよい状態の時があれば悪い状態もあり、治ったら、最悪のときに試したあれのおかげだと考えること。
ホメオパシーにしても症状が最悪のときに試みるから、放っておいてもいずれ元気になるが、よくなったのはホメオパシーのおかげだと信じこむ。
悪くなれば「好転反応」という都合のよい理論がある。

ホメオパス(レメディーを処方する人)は「適切なレメディを摂取すると、体内の毒素が排出されて、症状が一時的に悪化することがある」と説明し、デトックスを勧める人も「毒素が出ているあいだはかえって気分が悪くなるかもしれない」と答える。

病気というのはよくなるか悪くなるかのどちらかで、時間が経てば自然に治ることもある。
「好転反応」というヘリクツ、政治家が「今の苦難は」と言うのもそうですね。

(追記)
ホメオパシーについては以前にも書いています。
「いのち」と「場の力」(2)
『ホメオパシー セルフケアBOOK』


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