黒川祥子氏は、虐待を受けた子どもは児童相談所によって保護され、親から離されたら、それで問題は解決すると思っていたそうですが、私もそのように思っていました。
『誕生日を知らない女の子』を読み、それは大きな間違いだということを知りました。
黒川祥子氏は「あいち小児保健医療総合センター」の杉山登志郎医師と新井康祥医師に話を聞きます。
虐待は後遺症が残る。
明らかに体格が違っていても、弱肉強食で生きてきた子たちですから、普通に小学校低学年が中学生をおどしますよ。生き抜くことしか考えられない環境で生きてきたので、たとえはよくないと思いますが、まるで動物の縄張り争いです。小学校一年でも二年でも、生きるために縄張りを作ろうと必死でやってますよ」
厚労省の統計では性的被害は3%だが、「あいち小児保健医療総合センター」の診察の内訳では17%ぐらい。
たとえばこの柱の陰とか壁の裏とかで、ぱっとやってしまうんです。あらかじめお互いに話をしてあるからできるんでしょうね。柱の陰でさっとパンツを脱いで、『できた』『できなかった』って戻ってくる。これは、児童養護施設ですごく困っていることです。
小学校低学年でも性的な興奮は感じるので、性被害を受けた子は養護施設の中でも性行為をやってしまうんです」
虐待によって脳に変化がもたらされることがあるそうです。
生まれつき発達障害でなくても、虐待により大脳のさまざまな領域に機能障害が引き起こされることで、ADHD的な行動に出るなど、広汎性発達障害のように見えることもある。
とはいえ、虐待をする親を断罪すればいいというものではありません。
佐藤喜宣氏によると、子どもへの虐待で一番精神的にダメージが大きいのは性的虐待ですが、「あいち小児保健医療総合センター」では、診察室にやってくる被虐待児の親の多くが「未治療の被虐待の既往」を持っており、とりわけ深刻なのが性的虐待により後遺症なのだそうです。
カルテを作った親の63%が性的虐待の被害があり、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)という診断名がついたケースは42%にも及ぶ。
親も被害者だったわけです。
黒川祥子氏はファミリーホームの取材をします。
ファミリーホームは、養育者の住居において、5人から6人の要保護児童を育てていく制度だそうで、里親は個人という位置づけなのに対し、ファミリーホームは第二種社会福祉事業に分類される。
そんなのがあるとは知りませんでしたが、世の中にはえらい人たちがいるものだと感心しました。
『誕生日を知らない女の子』は、虐待を受けてファミリーホームで生活する4人の子供と、大人1人(自身が虐待を受け、自分の子供を虐待する)が取り上げられています。
虐待の後遺症がこれほどのものだとは思いもしませんでした。
ずっと以前、里親になろうかと思ったこともありますが、とてもじゃないけど私にはできないと思いました。
驚いたのが、児童養護施設の中には、子供の世話をあまりしない、すなわちネグレクト状態の施設があるということ。
職員による体罰や、子供同士の暴力、そして生活習慣、一般常識を教えない。
風呂に入っても身体の洗い方、頭の洗い方を知らなかったり、ウンチをした後に尻を拭くことを知らなかったり、熱いお茶の冷まし方(水を入れたり、フウフウして冷ましたり)を知らなかったりなどなど。
「厚生労働省は7月31日、虐待などのため親元で暮らせない子ども(18歳未満)のうち、未就学児の施設入所を原則停止する方針を明らかにした。施設以外の受け入れ先を増やすため、里親への委託率を現在の2割未満から7年以内に75%以上とするなどの目標を掲げた。家庭に近い環境で子どもが養育されるよう促すのが狙い。」(毎日新聞2017年7月31日)
https://mainichi.jp/articles/20170801/k00/00m/040/119000c
しかしながら、ネットによると、ファミリーホームや里親による虐待も少なくないようです。
http://child-abuse.main.jp/jian.html
虐待の連鎖をなくすためにも、虐待を受けた子供をどのようにして回復させるか、これまた難しい問題だとため息が出ました。
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