小熊英二『日本社会のしくみ』にこんな問題が書かれています。
小熊英二さんは3つの回答を出しています。
①賃金は労働者の生活を支えるものである以上、年齢や家庭背景を考慮するべきだ。だから、女子高生と同じ賃金なのはおかしい。このシングルマザーのような人すべてが正社員になれる社会、年齢と家族数に見合った賃金を得られる社会にしていくべきだ。
②年齢や性別、人種や国籍で差別せず、同一労働同一賃金なのが原則だ。だから、このシングルマザーは女子高生と同じ賃金なのが正しい。むしろ、彼女が資格や学位を取って、より高賃金の職務にキャリアアップできる社会にしていくことを考えるべきだ。
③この問題は労使関係ではなく、児童手当など社会保障政策で解決するべきだ。賃金については、同じ仕事なら女子高生とほぼ同じなのはやむを得ない。だが最低賃金の切り上げや、資格取得や職業訓練機会提供などは、公的に保障される社会になるべきだ。
どれが正しいというわけではありません。
私はどれももっともだと思います。
戦後日本の多数派が選んだのが①だった。
しかし、今は公務員でも正規が減っている。
専門職の人でも非正規が多いから、いつクビを切られるかわからない。
正規と非正規の格差が生じている。
②は能力の差によって格差が拡大する。
③は公的に保障ということは、税や保険料の負担増大などは避けがたい。
小熊英二さんは③の方向を目指すべきだと言います。
どれを選ぶにしろ社会の合意が必要。
方向性が決まれば、政治家はその方向性に沿った政策を示し、その政策の実現に向けて努力しないといけない。
しかし、橘木俊詔『日本の構造』には、社会保障支出、公教育支出ともに多額でないという事実からして、日本が大きな政府になることはないであろうとあります。
小熊英二さんは今までの日本の社会のしくみではもうもたないと書いています。
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