三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『職業欄はエスパー』と『トンデモ超能力入門』1

2012年10月08日 | 問題のある考え

私は超常現象否定派である。
認めたくないという気持ちが強いが、それは地動説を否定した異端審問官と似ているかもしれない。
自分の信じていた世界が根底から覆されることを恐れるといった気持ち。

スプーン曲げの清田益章、UFOなどの秋山眞人、ダウジングの堤裕治の三人の超能力者を被写体にしたドキュメンタリーを、森達也が1993年に企画し、1998年に番組が放送された。

そして、番組を基にした『職業欄はエスパー』が出版されたのは2001年。

『職業欄はエスパー』を読むと、この三人のエスパーや関係者が嘘をついているとは思えない。
ひょっとしたら本当なのかと、否定派の私は動揺してしまった。

超能力を「信じる」「信じない」という二者択一を迫られる。
しかし、ある・なし論争は不毛だ、と森達也氏は言う。
森達也氏は死刑問題やオウム真理教についても同じことを言っている。
だけど、読み進むにつれ、森達也氏が超能力者に心を寄せて肩入れしていることが明らかになり、超能力に懐疑的な人たちに批判的だということがわかる。

清田益章氏の両親は清田氏が子供のころ、カウンターに置いたスプーンがひとりでに曲がったり、隣の部屋の玩具が壁をすり抜けて来たり、清田氏がテレポーテーションらしきことをしたと語っている。
両親は嘘をついているようにも、また目立ちたいから言ってるとは思えない。

1976年、アメリカの火星無人探査機バイキング一号が火星に着陸して、火星の写真を地球に電送したのだが、その時に清田益章氏は火星に行ったという。
清田益章氏は地表探査機のカメラの前で手を振り、砂に「2B」という文字を書いた。
本人は「夢の可能性もあるからな」とは言うけれども。
森達也氏はこう書いている。
「率直に書く。僕にはお手上げだ。仮に嘘だとしたら、常に神経質なほどにリスクと他者の視線を自覚している清田が、こんな割の合わないフィクションを捏造するはずはない。ならば真実なのか? 僕にはわからない」
こういう書き方をされると、ひょっとしたら本当なのかという気がしてくる。

秋山眞人氏は、一円玉を何枚か額にのせて、4枚がひっついたまま落ちない超能力を見せる。
これはともかく、今まで宇宙人には400回ぐらい会っているそうだ。
秋山眞人「地球に今来ている宇宙人は三種類なんです。ひとつはグレイといいますけど、爬虫類が進化したタイプです。よくSF映画なんかにも出てくる、眼の大きな皮膚に光沢のあるあの感じですね」
「もうひとつはヒューマノイド・タイプ。今地球上ではいちばん数が多いし、僕に頻繁に接触してくるのもこのタイプです。(略)
僕が頻繁に会うヒューマノイド・タイプは、外見は地球人とまったく変わりません。骨格や筋肉を多少は変えられるようですね。名刺も持っているし家族もいるし保険証も持ってます」
もうひとつは巨人族。
「大きいんです。身長は四メーターから五メーターぐらい。これは地球で言えば犬が進化して二足歩行になったタイプです」
秋山眞人氏は静岡駅地下街の「草苑」という喫茶店で何人もの宇宙人と会った。
「彼らは僕自身が『会いたい』と望まなければ絶対会いに来ません。つまり、こちら側の怖れが助長されるというか大きくなることを非常にいやがるんですね」

こんな話を聞かされたら、たいていの人は一歩引いてしまうと思うが、森達也氏はどう思ったのか。
「草苑」という喫茶店は宇宙人の溜まり場になっていたという。
ところが1980年、静岡駅地下街でガス爆発事故があり、「草苑」も吹っ飛んでしまった。
「じゃあこれは、グレイの陰謀?」
秋山「わかりません。可能性はあると思うけど」
『職業欄はエスパー』には、静岡駅地下街ガス爆発事故のことを細かく紹介されており、陰謀説に説得力があるように思わせている。

秋山眞人氏は、宇宙人と会いたいと言う現代グループの会長と食事していたときに、宇宙人に念を送ると目の前に石が落ちてきた。
調べるとイエローダイヤだったという。
秋山眞人氏はいろんな会社のコンサルタントとして相談に乗っているそうだ。

でも、集合無意識の例として、百匹目の猿やグリセリンの結晶化を秋山眞人氏はあげているのはどうか。
「かつてはかなりの低温でも決して結晶化しなかったグリセリンが、欧米のある実験室で突然結晶化を始めたその瞬間、世界中でグリセリンの結晶化が始まったのです。有名な実話です。これは最早、モノにも集合無意識が存在しているとでも仮定しなければ説明できない現象です……」
しかし、百匹目の猿もグリセリンの結晶化もライアル・ワトソンが広めた与太話である。
ちょっと調べたら間違いだとすぐにわかることなのに、相手の言い分だけを紹介する森達也氏のやり方こそ問題があるのではないかと思う。

コメント
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