三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『息子がなぜ 名古屋五千万円恐喝事件』2

2012年07月15日 | 厳罰化

事件が起きると、加害者宅に匿名の電話、手紙が殺到する。
名古屋の中学生による五千万円恐喝事件でも、主犯格とされる少年の姉は「普通の人」が怖いと書いている。

40代くらいの女性から「今回の(事件の)白石さんですよね。まったくいい加減にしてくださいね。テレビを見たけど、地域、学校に謝ってくださいよ」という電話がかかり、母親が「はい、そうします。どちらさまでしょうか」と答えると、「謝っても許しませんよ」と言って電話は切れた。
他にも「この地域から出ていけ」「極悪非道の息子を生んでへっちゃらでいる」などなど。
母親「この種の電話はすべて大人の声で、しかも女性からの電話が多かったように思います」

針金を輪にしたものが家の裏口に大量に置かれていたり、車のボンネットにXと大きく書かれたり、タイヤがナイフのようなもので切り裂かれたり。

父親は会社の同僚から「よく会社に出て来れるよな」という陰口を言われる。
最もショックだったのは仲間だと思っていた人から「康介君が逮捕された後も変わらず会社に出てきて、平気な顔をしているじゃないか。早く家を売って弁済して、しばらく休職したらどうか」と言われたこと。

父母の兄弟や親戚も罵る。
インターネットには実名・住所・父母の名と生年、家族構成、勤務先などの虚実入り交じったデータが流された。
白石家の写真も公開され、引っ越したという噂が流れると「区役所に行って除住民票を取りましょう」と呼びかける、など。

警察や弁護士も当てにならない。
4月5日に本人は逮捕されるのだが、一か月前の3月6日に、父親は緑署に事件として調べてほしいと相談している。
警官は「いや、被害者の方から被害届が出ていないのでね。なんとも出来ないんですよ」と相手にしない。

弁護士に相談したほうがいいと警察からアドバイスされる。
4月7日、弁護士から「すぐ(恐喝の)弁済金として五百万円を用意してほしい」と電話があった。
4月17日、弁護士から「相手(松井さん)の弁護士さんはお話のできる人だ。すぐに二千万円を集めてください」と指示される。
しかし、警察はまだ捜査中で、実際に息子が松井君からいくら取ったのか分からない状態だった。
父親が「先生、ちょっと待ってください。おかしいじゃありませんか。それが本当に立件されて出てきた数字であれば、私は『わかりました』と申し上げますが、まだ捜査中じゃないですか。息子には当然、罰を受けさせます。しかし、とりあえず、きちんと調べたうえ、お支払いしたい」と言うと、弁護士は「そんなことでしたら、私はもう下ろさせてもらいます」と言ったという。

手をさしのべる人もいる。
「最後に、こんな私たち家族を助けてくれた人たちがいました。名前は出せないけど、私はとっても感謝しています。いろんな人にいろんなことを教わって本当に助けてもらって人生を救ってもらいました。
助けてくれる人たちがいたから、私たちは今生きていられるんだろうと思います。
本当に本当にありがとうございました」

息子が逮捕された翌日の4月6日、友人が「これから大変だろうから、しばらく娘さんを預かろう」と言ってくれ、娘は友人宅に避難した。

母親が勤める病院の院長に事情を伝えて「辞めさせてください」と申し出たら、院長は「(知っているのは)わしひとりだで、気にせんでいい」と引き止めた。

院長は自宅まで差し入れしに来て、「迷惑も全部引き受けるから、仕事を辞めないで。むしろ、仕事はしたほうがいいんだから」と言い、その後も「仕事は辞めるな」とはげまし続けた。

父親の友人から「体大丈夫か。食事したか。今から差し入れしようか」と電話があり、
「ここへ来たら大変ですよ」と母親が断ると、「そんなことは俺には関係ないから」と言って、実際に差し入れてくれた。

親しくつきあっていたわけではない近所の人から、「食べなさい、これ。体を壊したらどうしようもないから」と差し入れがあった。

母親「こうして、私たちを助けてくださった人たちがいたからこそ、私たちは死なずに済んだのだと思います」
こういう人に私はなりたい。

コメント (23)
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