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三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

アメリカの保守派と福音派と政治と

2009年09月13日 | キリスト教

オバマ大統領に抗議デモ=保険改革反対の保守派-米首都
オバマ米大統領が目指す医療保険改革に反対する保守派が12日、全米から首都ワシントンに集結し、抗議デモを行った。米メディアによると、参加者は1万人以上。連邦議会議事堂前は「大きな政府はいらない」と訴える人々で埋め尽くされた。
参加者は「わたしの保険に手を出すな」「オバマ大統領は社会主義者だ」などと書かれたプラカードや横断幕を掲げ、首都の目抜き通り「ペンシルベニア通り」を議事堂に向かって1時間以上にわたって行進した。
時事通信9月13日
うーん、このデモに参加している人たちは保険に入っているんだろうけど、マイケル・ムーア『シッコ』を見ていないんだろうか。

アメリカの保守派の多くはキリスト教福音派。
キリスト教福音派はアメリカ人の3分の1を占める。
キリスト教福音派はマイケル・ムーアの映画なんか見ないと思う。

町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』はアメリカ在住の著者が見聞したコラム集。
町山智浩氏によると、2006年に18歳~24歳のアメリカ人に対して行なった調査では、88%は世界地図を見てもアフガニスタンの位置がわからず、63%はイラクの場所を知らなかった。
パスポートを持っているアメリカ人は国民の2割。
外国のことだけではなく、アメリカ人はアメリカ国内のことすら無知である。
ナショナル・ジオグラフィックの調査によると、アメリカの地図をみてニューヨーク州の場所を示せない者が5割いる。
アメリカが日本に原爆を投下した事実を知っているアメリカ人は49%にすぎない。
アメリカの成人の2割は太陽が地球の周りを回っていると信じている。
テレビや新聞のニュースを見ない人が多く、18歳から34歳のアメリカ人で新聞を読むのは3割に満たない。
「主流メディアや知識人はブッシュ政権の過ちを批判し続けたが、まったく一般には届いてなかったのだ」
まして、ブッシュを批判したマイケル・ムーア『華氏911』がカンヌでパルムドールをとったなんてアメリカ人の多くは知らないと思う。

どうしてアメリカ人はそんなに無知なのだろうか。
「アメリカ人は単に無知なのではない。その根には「無知こそ善」とする思想、反知性主義があるのだ」
「歴史学者リチャード・ホフスタッターは、アメリカ人の知識に対する反感の原因のひとつにキリスト教福音主義を挙げている。福音主義とは、福音、つまり聖書を一字一句信じてその通りに生きんとする、いわゆるキリスト教原理主義のことで、自らを福音派とするアメリカ人は全人口の3割を占めている。彼らにとって余計な知識は聖書への疑いを増すだけであり、より無知なものほど聖書に純粋に身を捧げることができる」

まあ、それだけなら個人の考えと言いたいところだがそうはいかない。
「100万を超える自宅学習家庭のうち75%がキリスト教原理主義だ。高等教育を受けていない親が子どもを教え、それが下の世代に継承されていく。アメリカの一流大学の理系学生の半分以上がアジア系かアジアからの留学生になってしまった原因のひとつだ」
アメリカの大学で博士号を取得する者の4割が海外出身者で、2010年には7割を超えるそうだ。

いくらなんでもニューヨーク州の場所を知らない人が5割、天動説を信じている人が2割もいるなんてほんまかいなと思ったのだが、現実は以下の通りでした。
ダーウィン映画、米で上映見送り=根強い進化論への批判
進化論を確立した英博物学者チャールズ・ダーウィンを描いた映画「クリエーション」が、米国での上映を見送られる公算となった。複数の配給会社が、進化論への批判の強さを理由に配給を拒否したため。12日付の英紙フィナンシャル・タイムズが伝えた。
映画は、ダーウィンが著書「種の起源」を記すに当たり、キリスト教信仰と科学のはざまで苦悩する姿を描く内容。英国を皮切りに世界各国で上映される予定で、今年のトロント映画祭にも出品された。
しかし、米配給会社は「米国民にとって矛盾が多過ぎる」と配給を拒否した。米国人の多くが「神が人間を創造した」とするキリスト教の教義を固く信じている。ある調査では、米国で進化論を信じるのは39%にすぎず、ダーウィンにも「人種差別主義者」との批判があるという。
今年はダーウィン生誕200年で、「種の起源」出版150年の節目の年。英国では関連イベントが盛り上がっている。
時事通信9月13日
そういう状況なのである。

問題は、こうした聖書に書かれてあることは100%正しいと信じ込んでいて、世界のことに関心を持たない人たちがアメリカの政治を動かしているということだ。
「福音派は元来、俗事にすぎない政治には関心が薄かった。それが強力な票田になることに気づいたのは共和党だった」
福音派の78パーセントが投票に行く。
「1980年の大統領選挙で、共和党は伝統的モラルへの回帰を唱えて彼らを取り込み、以後、福音派は共和党の強力な支持基盤になった」

町山智浩氏は「アメリカに住んでみて、とにかく驚くのは右翼コメンテーターたちの口汚さである」と言う。
「人口の2割もいない黒人の権利なんか無視しろ」
「不法移民は機銃掃射で皆殺しにしろ」

福音派も負けていない。
「アメリカはイスラム教国に攻め込んで、指導者たちを皆殺しにし、国民をキリスト教に改宗させなくちゃ」
「地球温暖化はリベラルが作ったウソなのよ」
「進化論は悪魔の嘘」
「中絶は殺人」
「ゲイは地獄に行く」

そして、「オバマはイスラムのスパイだ」というデマ。
「キリスト教右翼の父」と呼ばれるフォルウェルという牧師は「政治と宗教の分離は悪魔の計略だ。アメリカの国政は我々キリスト教徒がコントロールすべきだ」と公言していたそうで、フォルウェル牧師の支持がないと共和党候補は大統領になれないわけで、アメリカも宗教国家なんだなと思う。
イスラム国家のことをあれこれ言えない。

「その他、アメリカ人の時事問題への無知の原因には、右派メディアの暴走や、教育の崩壊などいろいろな理由があるが、とにかく、ニュースを知らない人たち、外国に興味のない人たちによって大統領が決定され、その大統領が無茶な戦争を起こし、デタラメな政策で経済メルトダウンを起こして日本や世界を巻き込んでいるわけで、この不条理には、もはや笑うしかない」

そうは言っても、オバマを大統領にしたアメリカはやはり大したものである。
在日の人や被差別出身者が首相になる日はまだまだ先だと思う。
それに右翼の差別的発言は日本だって負けてはいないし、環境問題でも鳩山代表の「温室ガス25%削減」発言に、読売新聞や産経新聞は批判的というか、まるでブッシュである。
こういう点でアメリカに追随してどうするんかいなと思う。

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