裁判員裁判で初の無期懲役判決 和歌山地裁
和歌山市六十谷の自宅隣に住む女性を殺害し貴金属を奪ったとして、裁判員裁判では初めて強盗殺人などの罪に問われた無職、赤松宗弘被告(55)の判決公判が16日、和歌山地裁で開かれた。成川洋司裁判長は「収入がないのに浪費したあげくの悪質な犯行」として求刑通り無期懲役を言い渡した。弁護側は酌量減刑したうえでの懲役25年が適正としていた。裁判員裁判で無期懲役の宣告は初めて。これまで最も重い判決は東京、青森両地裁の懲役15年だった。
裁判員6人と補充裁判員2人は閉廷後に全員が記者会見に出席。それぞれ「いい経験になった」「参加してよかった」などと充実感を口にした。(産経新聞9月16日)
初犯だし、空き巣だったし、凶器も準備していない。
無期懲役は重いと思う。
裁判員制度に賛成する人は冤罪が減ることを期待しているが、実際は裁判員の存在を利用して重罰化に寄与していると思う。
それにしても裁判員の「いい経験になった」「参加してよかった」という感想はちょっとなあと思う。
これが市民感覚なんでしょう。
では、この事件の被告はどういう人間なのか。
元雇い主が証人としてこのような証言をしている。
弁護人「被告の性格は」
証人「まじめでおとなしくて温厚で、怒ったところを一度も見たことがない」
弁護人「被告が森永ヒ素ミルク事件の被害者だと聞いたことはあるか」
証人「被告の両親から聞いていた。他の子供と食らえると虚弱で、目が悪いのもそのせいだと」
弁護人「あなたからみてヒ素ミルク事件の影響と思えたことはあるか」
証人「何をするにもスローテンポで、ものの理解が人よりやや劣るところがあった」
弁護人「被告はどれぐらい、あなたのところで働いていたのか」
証人「30年ぐらい前から14~15年間」
弁護人「被告の仕事ぶりは」
証人「昔からスローテンポで覚えが悪いが、まじめにこつこつやるのでかわいがっていた」
被告の供述調書。
検察官「私は7男の末っ子として生まれましたが、いまは兄弟は2人だけです。家や車などの資産はなく、貯金もありません。収入はいまはありませんが、以前は多いときは17万円ぐらい、少ないときは10万円ぐらいありました」
被告の証言。
弁護人「3月末にもらった2月分の給料はいくらだったか」
被告「15万円ぐらい」
弁護人「5月1日にもらった最後の給料はいくらだったか」
被告「12万円」
同居していた男性の証言。
弁護人「被告はどのような性格か」
証人「人当たりがよくて、頼まれたら嫌とよう言わん性格。けんかなんかもしたことがない」
弁護人「4月に仕事がなくなったのはなぜか」
証人「社長と親方がけんかしたから」
弁護人「けんかに被告は関係しているのか」
証人「いいえ」
弁護人「失業保険は」
証人「ない」
弁護人「勤務先は雇用保険を掛けていなかったのか」
証人「はい」
弁護人「被告の生活は派手ではなかったか」
証人「派手ではない」
弁護人「被告が仕事をさぼってパチンコをしたことは」
証人「それはない」
そうして、金がなくなり、隣家に空き巣に入り、家人が帰ってきたので殺してしまう。
弁護側が主張するように懲役25年になったとしても、55歳だから満期で出所したら80歳。
なんともはやとため息が出てしまう。
元の雇い主の証言。
弁護人「事件の原因は何だと思うか」
証人「人を雇用する人は、ある程度の生活を保障する義務がある。被告の雇い主がひと言、『もうじき仕事が出るからがんばれ』と言っていれば、事件は起きなかったかもしれない」
仮に被告が10年で刑務所から出てきたとして、65歳だから生活保護を受けることができる。
約12万円の金額があれば、被告はそれまでのように平穏な日々を過ごすのではないだろうか。
そう考えると、ちょっとしたことでこの事件は起きなかったはずだ。
なんともやりきれなさを感じる。