三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

「ヒロシマの平和を疑う!」の品格を疑う

2009年08月08日 | 戦争

8月6日に行われた田母神俊雄氏の講演、聞きに行きたかったです。
佐々井秀嶺師ジェツン・ペマ女史(ダライラマの妹)の講演自体はあまり面白くなかったが、お二方の顔を見れたので満足な私はミーハーなのである。

田母神氏の講演会は主催者発表では1300人の聴衆とのことだが、メルパルクホールにそんなに入れる部屋があるのだろうか疑問です。
田母神氏の講演はノリがすごいらしいし、田母神氏の近著『自衛隊風雲録』にはこう言う記述があるそうだ。
・・・「そんなの関係ねえ」・・・と述べたのは失敗だった・・・「そんなの関係ねえ、オッパッピー」というべきだった

剽軽な人らしい。

yahoo知恵袋を見ると、田母神氏からメールの返事をいただいた人がいた。
色々意見はあると思いますが、広島市民としては、やはり核武装を容認する意見を持つ方の講演が、8月6日に行われることに対して、秋葉市長と同じ考えです。この日は、私達にとって、本当に特別な日なのです。

その旨、田母神氏に一市民の一意見としてメールにてお伝えしました。その回答として、以下メールが送信されてきました。

貴女は多くの広島県民が貴女と同じ考えであると言われますが私はそうは思いません。私が計画して8月6日に広島講演を実施することにしたわけではありません。広島県民の方々が計画をされているということです。貴女は自分だけが常識があり、自分と考え方の違う広島県民は県民ではないと思っておられるようです。貴女のやっていることは立派な言論弾圧です。
田母神俊雄

このような切り捨てる回答では、意見が違うもの同士分かり合えないと思います。残念でなりません。
大した用事ではないメールならともかく、依頼や相談メールに返事が来ないことがしばしばあって人間不信に陥ってしまう私としては、田母神氏のこまめさに感心した。
だけど、この人のメールがどうして「言論弾圧」になるのだろうか。

田母神氏の「原爆の日」講演に広島市長が「待った」
 懸賞論文への投稿が発端で更迭された元航空幕僚長、田母神俊雄氏を原爆記念日(8月6日)に広島市に招き開催予定の講演会について、同市の「秋葉忠利市長が、被爆者や遺族の悲しみを増す恐れがあるとして日程変更を29日、文書で要請した。主催者側は予定通り実施する構えだが今後、憲法の「集会の自由」が脅かされ、「言論封殺」と批判された“田母神事件”が再燃する恐れも出てきた。
 この講演会は日本会議広島などが計画した「ヒロシマの平和を疑う~田母神俊雄氏が語る、広島発真の平和メッセージ」。5月に中国の核実験の被害をテーマに講演会を開催。日本が唯一の被爆国でなく、共産圏の核に日本の反核団体が寛容であることへの疑問を踏まえ、いかに核の惨禍を回避するか--として同氏の講演会を企画したという。
産経新聞6月29日)

「憲法の「集会の自由」が脅かされ」とか「言論封殺」と、まるで「人権派」みたいなことを人権嫌い、憲法嫌いの産経新聞が言うとはね。
講演をやめろとか言っているわけではなく、日程を変更してほしいと要請しているわけで、思想言論の弾圧だなどと大げさとしか思えない。
江川紹子氏「今回のように、「言論の自由」を振りかざし、時と場所をわきまえない行為を押し通そうとすることこそ、「行きすぎた権利偏重」ではないのだろうか」と批判しているのももっともである。
正直なところ核武装論者である田母神氏の「ヒロシマの平和を疑う!」という講題の講演会をわざわざ8月6日に広島で行うのはイヤミだと思う。

主催者の日本会議広島が中国新聞に掲載した意見広告です。
1.「核兵器のない世界」は私たちの願い
核兵器廃絶は私たちの願いです。本会には被爆者や被爆二世の方々も多数おられ、平和を希求する思いは誰にも劣るものではありません。
2. 北朝鮮の核に触れないヒロシマの「平和宣言」への疑問
昨年も、一昨年も8月6日の広島「平和宣言」は、北朝鮮の核問題に一言も触れませんでした。長崎の平和宣言においては北朝鮮の核について明確に触れているのに、「ヒロシマ」ではそれがすっぽりと抜け落ちています。ここに、私たちは現在の「ヒロシマの平和」に大きな不安と疑念を抱かざるをえません。それが今回の企画に「ヒロシマの平和」を疑うというテーマを掲げた理由です。
3. 再び被爆者を生み出さないために
「核兵器も戦争もない世界」を実現するには、その精神を高く掲げつつ、万全を期して現実的脅威に備えることが必要です。そのためには客観的に現状を把握し、具体的施策を考え努力することが大切です。そして、近年、度重なる北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験の強行という事態に対し、広島市民として再び核兵器の犠牲とならないために何をすべきかを考えることは、真の平和構築のための道を考えることにほかならず、広島の平和の祈りとは表裏一体の営みと言えましょう。そこで私たちは、敢えて8月6日を選び、我が国の安全保障の専門家であり、時の人でもある田母神氏の講演会を行うことを企画しました。

意見広告には日本の核武装の是非については直接触れていないが、そもそも田母神氏は日本も核武装すべきだという主張をしているわけで、そういう人を講師に呼ぶということは、「再び被爆者を生み出さないために」は北朝鮮に対抗して日本も核兵器を持つべきだと暗に訴えているようなものだ。
実際、6日の講演会で田母神氏は「唯一の被爆国だからこそ、3度目の核攻撃を受けないために核武装するべきではないか」と呼びかけたそうだ。
8月6日が近づくと右翼の街宣車ががなってうるさいのだが、今回の講演会、右翼の街宣車と同じことをしているとしか私には思えない。
江川紹子氏は「広島にとって8月6日は、原爆の犠牲になった人たちへの慰霊と、このような悲劇が2度と起こらないようにという祈りの日であることは、わざわざ説明されなくても、日本で暮らし、日本で教育を受けた者であれば分かっているはずだ。そういう日に、しかも原爆ドームまで徒歩1分という場所で、わざわざ殴り込みをかけるようにして、核武装論者の講演会を開く。そのデリカシーのなさ、想像力の貧困さには、驚きを禁じ得ない」と書いている。
これまたその通り。

北朝鮮嫌いでは田母神氏と幸福実現党は意見が一致するわけで、やはりというか何というか産経新聞8月2日に、田母神俊雄×大川きょう子「激論・日本の選択」(上)(下)という意見広告が載っている。
(上)は北朝鮮について、(下)は中国、自衛隊、憲法改正について激論がかわされている。
(上)では、「そう」「そうです」「そうですね」を田母神氏は4回、大川宣伝局長は7回していて、両氏の話が盛り上がっていることが伺われます。
それにしても、都議選で惨敗した幸福実現党党首と対談するなんて、田母神氏は大胆な人もである。
わざわざ産経新聞にだけこの対談が載ったということは、幸福実現党と産経新聞は仲良しこよしなのだろうか。
主催の日本会議広島と幸福実現党との関係も知りたいものです。

ちなみに日本会議広島のHPを見ると、こんな活動もしている。
三島・森田両烈士38周年追悼祭 開催 平成20年11月29日・広島市 
  昭和45年11月25日に三島由紀夫・森田必勝 両烈士が自衛隊市ヶ谷駐屯地にて自決してから38年。この日、府中町の多家神社神楽殿にて両烈士38周年追悼祭が、石橋良三県議会議員ほか20名にて、しめやかに執り行われた。
 折りしも田母神前航空幕僚長の更迭、及びその後の政府による自衛隊内への思想弾圧が問題となっていた時だけに、三島決起の檄文の中にある
「もつとも名誉を重んずべき軍が、もつとも悪質の欺賄の下に放置されて来たのである。自衛隊は敗戦後の国家の不名誉な十字架を負ひつづけて来た。自衛隊は国軍たりえず、建軍の本義を与へられず、警察の物理的に巨大なものとしての地位しか与へられず、その忠誠の対象も明確にされなかつた」
 「シヴイリアン・コントロールが民主的軍隊の本姿である、といふ。しかし英米のシヴイリアン・コントロールは、軍政に関する財政上のコントロールである。日本のやうに人事権まで奪はれて去勢され、変節常なき政治家に操られ、党利党略に利用されることではない」
という言葉が重く響いた祭典であった。
そうか、日本会議広島は自衛隊員が三島由紀夫の檄に同調して決起すればよかったと思っている人たちの集まりなのか。

コメント (14)
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