「一般市民には重い」「苦しい制度」 2例目裁判員会見
全国で2例目となる裁判員裁判を終え、記者会見に応じた裁判員たち。被告に懲役4年6カ月の判決を宣告し、緊張から解かれた表情で語る言葉には、一人の人生を考え続けた3日間の重みがにじみ出た。
さいたま地裁内で12日開かれた記者会見には、裁判員6人に加えて補充裁判員2人も参加した。
「大変疲れました」。感想を問われ、1人が口を開いた。被告人質問では積極的に質問を繰り返していた裁判員3番の男性だ。「やっぱり重いです。一般市民には非常に重い作業だった」「とても興味本位でやることではない」
今回の事件の焦点は、被告の刑の重さをどの程度にするかに絞られていた。まだ有罪か無罪かを真っ向から争う裁判員裁判は行われていない。
「(他の裁判員が)これから有罪か無罪かを決めることを考えると、非常に重くて苦しい制度だなと思う」。1番の男性は、こう語った。さらに、有権者から無作為に選んで審理に参加させる仕組みについて「苦労を強いている。回数を積み重ねることでみえた課題は、改善していただきたい」と要望した。
4番の男性は67歳。高齢者が参加する場合の負担の重さに触れた。「孫には『じいちゃん、大丈夫か』とさんざん聞かれた。もっと若いときにこういう体験をさせていただければよかったと思う」
今回の審理は3日間。出廷した証人は被害者1人だけだった。2番の男性は「精神的にきつかった」と話したうえで、「ふつうのけんかのように両方の話を聞いてから、もう一度聞き直すということができないのが、どうだったのかなと思った」と、短い審理期間の限界について語った。
他の裁判員や裁判官と話し合った内容は明かしてはならない決まりだ。4番の男性は「『守りたい』としかいえないと思いますが、まあ、どうでしょうかね。つらいところです」と実感を込めた。(朝日新聞8月13日)
「やっぱり重いです。一般市民には非常に重い作業だった」「とても興味本位でやることではない」という言葉が重い。
そのほかの感想も裁判員制度の欠陥を指摘しているように思う。
もっとも最初の裁判員裁判では「いい経験」と答えた裁判員もいる。
「ほっとした」「いい経験」裁判員が会見
全国初の裁判員裁判となった東京都足立区の路上殺人事件で、東京地裁での判決言い渡しを終えた裁判員経験者ら7人は、6日午後3時40分ごろから約1時間、記者会見に臨み、「ほっとした」「いい経験になった」などと感想を語った。(読売新聞8月6日)
うーん、こちらの感想は軽いというか、他人事のように思う。
懲役15年といっても、被告の年齢からいって無期懲役と変わらないのだから。
事件の中身の違いだろうか。
2番目の裁判員制度では、弁護側はこういう主張をしている。
弁護人「三宅さんは会社の資金繰りをつけようと努力しました。しかし、次第に資金繰りは悪化していきました」
《さらに、弁護人は、三宅被告が「ヤミ金融業者」からも借金をしてしまい、返済の苦しさが増していった経緯を述べた。これは検察側が「暴力団の組長から」としていた借金のことだ》
弁護人「三宅さんは、ヤミ金融業者への返済も苦しくなっていきます。この業者は暴力団でした。このため、三宅さんは『お金が返せなかったら若い衆になれ』といわれるなどしました。この三宅さんの危機を救ったのが被害者でした」
《被害者が三宅被告に金を貸し、窮状を救った経緯を説明する弁護人。一方、その貸し付けの条件があまりにも“過酷”だったことを強調する》
弁護人「お金を借りる際の利息は月1割。年で120%の利率でした。また被害者はお金を貸す際に三宅さんの母親らの住所を聞き、返せない場合は家族に請求すると言いました」
《さらに、弁護人は、金を貸した被害者が三宅被告に対して行った“仕打ち”を説明し、理不尽さを際だたせようとする》
弁護人「被害者は三宅さんに対して、理由もなく突然呼び出したり、殴るけるの暴行を加えたりしました。それでも、三宅さんは危機を救ってくれた被害者に感謝し、お金を返さないといけないと考えていました」(産経新聞8月10日)
正直、どっちもどっちという感じがする。
被告が被害者から暴行を受けた時点で警察に届けていれば、被告と被害者の立場が変わっていたわけである。
殺人未遂に対して懲役4年6月が適当かどうか「市民感覚」ではわかるはずがない。
これが無罪を主張している被告に死刑判決を出すとなると、「重い作業」ではすまないと思う。