三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

東野圭吾の復讐肯定論(3)

2006年12月22日 | 厳罰化

東野圭吾は「出所後犯罪歴のある者の氏名、住所、顔写真を公開する」べきだ、なんて無茶苦茶なことを平気で言う。
これは犯罪者だという目印を付けるために刺青をするようなものである。
軽犯罪は肩のあたりに小さな刺青、殺人だったら顔に、というふうに。
一度でも犯罪を犯した者は許さない、という東野圭吾は犯罪者の更生をまるっきり考えていない。

犯罪を防ぐ社会システムが不備だという印象を持っています。たとえば刑務所を法務省は「罰則のためだけではなく、更生される施設だ」と言っています。それはそれでいい。しかし「悪いことをしたら刑務所に入れられるよ」というのは戦前の日本はいざ知らず、今日では全く抑止力にはなり得ない。年末に金がない、家がないから悪いことをしようという者は、食事と寒さしのぎの寝所の確保のために罪を犯すかもしれない。バレなければ悪いことをしたほうが得だと思う人が多いことも事実ですから、そうした彼らが犯罪者になったとき、刑務所で本当に更生するかも疑問です。
また、少年犯罪が増えていますが、少年は多少悪くなると、少年院や鑑別所に少しぐらい入れられても反省どころか、かえって箔がつくぐらいに軽く考えています。もしそうした少年が軽く浅い考えで殺人でも犯したら、被害者の遺族はやりきれません。もちろん彼らだって傷つけた相手に痛みがあることはわかっています。しかし、どうわかっているのかが問題で、相手を傷つけることは自分が傷つくことだとは想像できないんです。

東野圭吾は矯正や更生保護といった仕事をどう考えているのだろうか。

そりゃ、「バレなければ悪いことをしたほうが得だと思う人が多い」のは事実で、政治家や企業のトップが更生するかどうか、私も疑問である。
だからといって、重罰を科せばいいというものではなく、少年院や刑務所での更生プログラムを充実させるべきであるし、出院、出所後のアフタケアを考える必要がある。
「食事と寒さしのぎの寝所の確保のために罪を犯す」人もいるけれど、しかし金も家もない人はどうすればいいのか。
本人だけの問題ではなく、政治経済の問題でもある。

「悪」がかっこよく見えるんです。何でかっこいいかというと「悪」であっても人権があるからです。人権を奪われた人間はかっこよくはなれません。その意味からも、犯罪者からは人権を奪わなくてはなりません。

「人権があるからかっこいい」というのは意味不明。
人権とは何かをきちんと教えることで、自分を大切にし、「人を傷つけることは自分も傷つけることになる」と想像させることができるようになると思う。

犯罪をなくすために何をしなければならないか、東野圭吾の考え。

罪を犯したらどんな悲惨な人生になるかを、子どものうちから家庭や学校で徹底的に教え込む。

つまりは、犯罪を犯した者をずっと差別し、更生の道をふさぐことによって、悲惨な人生をおくらせる必要があるというわけだ。
しかし、どんな人間も間違いを犯す可能性があるのだから、立ち直った人がいることを教えることは、子供の教育のためには大切ではないかと思う。

人間は本来性悪なものをもって生まれてきているんじゃないでしょうか? 放っておいたら普通の人でも悪いことをしでかしかねない。
だから家庭や学校で「世の中は君たちが悪いことができないような仕組みになっているんだ」と教育すべきだと思います。子どもたちは放っておいたら必ずいたずらをします。「いたずらをするとみんなに迷惑がかかる。迷惑をかけたらお仕置きが待っているよ」と順序立てて教えていく。「悪いことをしてはいけない。すると君自身が大変な目にあってしまうよ」。大人たちはそういう社会を目指していることをきちんと説明していけば、子どもたちの社会を見る目も確実に変わると思います。

これでインタビューは終わり。
こんな教育論で世の中がよくなるというのは安易すぎる。

東野圭吾の悪口を長々と書いてきたが、正直なところ復讐したいという気持ちは私も強くあって、「この野郎、バチが当たれ!」とか「この怨み、晴らさいでおくものか」といった怒りで沸々と煮えたぎることはしょっちゅうである。
だからといって、復讐を認めるべきだとは思わない。

復讐が制限され、禁じられたというのが人間の歴史である。
感情論だけなら復讐を肯定したくなるが、理性によって復讐を否定した道を、被害者感情という錦の御旗を振りかざして復活させていいものか。

犯罪が起こる可能性がない社会はアンチユートピアにしかあり得ない。
厳罰化を求め、犯罪者を抹殺しようとする人たちは、完全に統制され、少しでもはみ出した者を排除する社会を望んでいるのだろうか。

コメント (8)
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