女系天皇を否定することは女性差別につながるということの続きです。
②側室
男系を保つためには側室がいなくては無理だから、側室制度の復活を主張する人が出てきたりする。
一般人は子供ができなければ妻を追い出したわけだが、身分の高い人は側室という便利なものがある。
男系天皇を守ってきたのは側室のおかげである。
歴代天皇のうち半数は庶出だそうだ。
明治天皇は5人の女に15人の子供を産ませている。
孝明天皇の身辺には17人の女性がいて、6人子供が生まれたが、成人したのは明治天皇1人だけ。
大宅壮一『実録・天皇記』によると、大正天皇の直宮を除く宮家の創立者の全員が妾腹である。
そして、その11人のうち6人の母親は某女となっている。
母親の名前を記録にとどめる必要はないと考えられていた。
「腹は借り物」という考えなのである。
母親の血筋はあまり問われず、父系の血統だけが問題にされる。
『実録・天皇記』にこんなことが書いてある。
大沢雅五郎という儒者が、中国のこととして「古は天子に三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻相備わり」とあるのに、孝明天皇は17人の女性しかいないので、「恐れながら匹夫に均しき御姿にて実にもったいなき御事」と嘆いている。
ところが、大正天皇には側室はいない。
長子が庶出だった場合、後継者問題が生じるからというので、伊藤博文が側室を入れさせなかったと、浅見雅男『皇太子婚約解消事件』にある。
大正天皇の場合は、男子が4人も生まれたから問題はなかったにしても、昭和天皇は女子が続き、側室を入れることを進言されても拒んだ。
長い間続いてきた側室という「伝統」が変えられたのである。
それなのに今さら「昔のように『側室』を置くという手もあります。私は大賛成ですが、国内外共に今の世相からは少々難しいかと思います」なんてことを言う三笠宮寛仁の神経には驚く。
藤原正彦は「週刊ポスト」に「女系天皇容認は日本の品格を破壊する」なんて品格のない題の文章を載せているのだが、皇太子に妾を持てと勧める三笠宮寛仁の発言は品格があるかどうか聞きたいものだ。
ついでに悪口を言うと、藤原正彦は、伝統を尊ぶ風土から美が生まれ、天才が輩出する、天才が輩出することが世界から尊敬される品格ある国家の重要な指標である、イギリスがこれに当てはまる、いったことを書いている。
それにしても、イギリスの皇室は世界から尊敬される品格があると、藤原正彦は考えているらしいが、近年、品格が破壊されているように感じる。
③宮中祭祀
なぜ男系天皇だと伝統を守ることになるが、女系になったら伝統が破壊されるのか。
私にはどうも納得できなかった。
ところが、「Speak Easy 社会」というブログの「後櫻町天皇の苦労と宮中祭祀の問題」という記事を教えていただき、ああ、なるほど、と納得した。
天皇は宮中祭祀を行う。
これは神事である。
以下引用。
原則男子継承、そして絶対男系継承の本当の理由はここにあるのに違いありません。(略)
女性は、まず原理的に大嘗祭や新嘗祭の祭り主となることに問題があり、できるだけ避けるべきです。
それに加えて、生理という問題があります。
月のさわりの間、女性は、神事にかかわることは厳禁されてきました。
従って、神事と生理とが重なったら延期するしかないのですが、元日とか新嘗祭と生理が重なったら中止するしかありません。
なるほど、血のケガレがあるから女はダメなのか。
たしかにケガレを忌むのは日本の伝統である。
ちなみに、皇室の祭祀の多くは明治以降に作られたものである。
だから、後桜町天皇が現在、宮中で行われている祭祀をすべて行っていたわけではない。
ニキ・カーロ『スタンドアップ』という映画は、鉱山で働く女性が職場の男性たちからセクハラを受け、裁判に訴える話である。
鉱山は男の職場なのに女たちが入ってきて男の仕事を奪った、というので男たちは嫌がらせをする。
女系天皇反対論と似ていると思った。
とは言っても、『スタンドアップ』を見て私自身、女が出しゃばらなければこんなことは起きなかったのに、と思ったのも事実である。
天皇家の後継者問題を解決する一番いい方法は、皇太子、秋篠宮が離婚して、若い女性と再婚することだと思う。
おそらく国民の多くは仕方ないと納得するだろう。