三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

五日市剛『ツキを呼ぶ魔法の言葉』

2005年12月01日 | 問題のある考え

 

某氏より五日市剛『ツキを呼ぶ魔法の言葉』という冊子をいただく。
せっかくいただいたのに文句を言うのはなんだが、私はこういう自己啓発本は嫌いです。
ほめる人の気が知れない。

五日市剛という人は全く知らなかったが、ネットで調べてみると、かなり有名な人らしい。
講演会には大勢が集まり、『ツキを呼ぶ魔法の言葉』は2004年8月に発行されて、すでに20万部以上も売れているそうだ。
この冊子を好意的に紹介しているのは癒し系、精神世界系、そしてコーチングと関係のあるサイトが多い。

なんとあの船井幸雄氏も「彼がこの講演で話している内容は、私がいつも言っている事と、まったく同じです」とほめている(というか自慢している)。
しかしまあ、船井幸雄氏のうぬぼれももっともな話で、そう目新しいことを五日市剛氏は話しているわけではない。

ツキを呼ぶためには「ありがとう」「感謝します」と声に出し、汚い言葉は使わない、人の悪口を言わない。
「自分は運が良い」「ツイているんだ」と信じ、それを言葉にしていれば、ツキがやってくる。
つまりは、プラス思考にしてたら望んだ結果を得られるということにすぎない。

あまたある精神修養本、自己啓発本とそう大した違いはないと思う。
なぜ受けているのか。
宣伝の仕方が上手なんでしょうね。

それと、願望をかなえるための簡単(と思える)な方法を教えてくれることもあると思う。
しかも、その方法は大変わかりやすく、もっともらしいものである。
そして、えっ、うっそー、というようなエピソードを交えるところもうまい。
不良少女が立ち直って難関校に入学したという感動的実話(?)は、イスラエルのおばあさんの教えとは関係がないけど、読ませる。

それにしても、「人生は山あり谷ありまさかあり」、いいことばかりは続かないことはみんなわかっているはずなのに、ツイてばかりいる人生があり得ると考えるのは不思議である。
あるサイトでは、「ツキを呼ぶ魔法の言葉」を「宗教の本では、ありませんので、ご安心ください」とあった。
五日市氏と部下の「ツイてる?」「ツイてます!」なんて会話、福永法源の「最高ですか?」「最高です!」とどう違うのかと、私なんかは思うんですけどね。
こういった自己啓発本は安心できません。

 

五日市剛氏を好意的に紹介しているサイトを見ると、本田健中野裕弓といった人の名前があげられ、賞賛されている。
これまた全く知らない人である。
またまた調べてみると、この人たちが言っていることは、ちょっとした心の持ちようで幸せになる、運をつかむ、お金を手に入れる、ということのようである。

新聞の広告欄を見ると、『大金持ちになれる人』『その他大勢から抜け出す成功法則』『頭のいい女性の自己アピール』とかいった本がある。
こういった本を誰が買うのだろうか不思議になる。
読者の中の何人が、よりよい性格に変わり、一生の伴侶とめぐり逢い、仕事が順調にいくようになるのだろうか。

ヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』の主人公ブリジット・ジョーンズも自己啓発本の愛読者だった。

しかし、煙草の本数も体重も少しも減らなかった。
恋人はできたけど。

みんながみんな、運が良くなって幸せになるとか、思い通りに物事が運ぶとか、そんなことはあり得ないのはわかっているはずなのに、なぜその手の教えに夢中になる人は少なくない。

一時の楽しい夢を与えてくれるからなのか。
ところが、仏教はそれは夢だ、夢は覚めないといけない、と説くわけで、仏教や真宗が受けないのも当然かもしれない。

ある時の法座で、講師の話がつまらなかったという感想を言う人がいた。

というのが、「皆さんも必ず死ぬんですよ」とか「親戚でガンになって」という話を講師はされたのだが、「そんなことはみんなわかっている。元気の出る話が聞きたい」とその門徒さんは言われた。
元気の出る話か……。

コメント (6)
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