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中産階級ハーレム⑰ ─ 軽音楽

2021-08-15 14:41:21 | 中産階級ハーレム
アンダーソン/トランペット吹きの休日
アンダーソン/シンコペーテッド・クロック
アンダーソン/タイプライター
アンダーソン/プリンク・プランク・プランク
タイケ/旧友
プライアー/口笛吹きと犬
ゴセック/ガヴォット
ハイケンスのセレナーデ
ネッケ/クシコスポスト
ツィンメルマン/錨を上げて
JFワーグナー/双頭の鷲の旗の下に
ケテルビー/ペルシャの市場にて
スッペ/軽騎兵序曲
ホフシュテッター/ハイドンのセレナーデ
イヴァノヴィチ/ドナウ川のさざ波
レハール/メリーウィドウ・ワルツ
ヴォルフ=フェラーリ/マドンナの宝石
レオポルド・モーツァルト/おもちゃの交響曲
デンツァ/フニクリ・フニクラ
クニッペル/ポーリュシカ・ポーレ
リムスキー=コルサコフ/くま蜂の飛行
ファリャ/火祭りの踊り
デュカス/魔法使いの弟子
チャイコフスキー/「くるみ割り人形」よりマーチ
プロコフィエフ/ピーターと狼
モーツァルト/トルコ行進曲
バツィーニ/妖精の踊り
ドヴォルザーク/ユーモレスク
クライスラー/美しきロスマリン
ハチャトゥリアン/剣の舞


いまって第4波? 第5波? 「第」って要ります? 交響曲第9番第4楽章。うっとうしい。クラシックやジャズについて知ったかぶると嫌われますが、でも昭和の高度成長期にはステレオ装置が爆発的に普及し、それにふさわしいレコードをというので各種名曲全集、子どもに聞かせる初歩的なクラシックの類が普通の家庭にもあった。

私の親は倹約家だったので粗末なポータブルのレコードプレーヤーで聞いていたが、そうしたクラシックのレコードをずいぶん買い与えてくれた。↑画像の右側、小学館が日本コロムビアの音源で企画した、それぞれ解説書と共に化粧箱に入った名曲全集、親は「運命・未完成」「四季」「3大バレエ」など6枚だけ予約購入、そのとき買わなかった「悲愴」「幻想」「魔弾の射手」とかの文言に想像を膨らませたものだ。

軽音楽=Light Musicというのはおもにイギリスでの呼び方。前述のような初歩的・親しみやすいクラシックを日本ではホームミュージックとかセミクラシックとか呼んでいた。文化人や富裕な商人などが家族や友人と少人数で演奏して楽しむサロン・ミュージックが発祥だといい、ショパンやドビュッシーもそうした背景から頭角を現したそうである。なので短く、インスト曲でも詩的な題名が付けられ、あるいは長い歌劇から1曲だけピックアップしたり、現代のポピュラー音楽の流通し方を先取りしていた面があるようだ。

1978年のザ・ベストテン開始と共に私のクラシック中心の時代は終りを告げたが、ずっと後、就職して何年目かの頃、部署は別だったが係長のKさんはクラシックが好きとのことで「年を取ってベートーヴェンの弦楽四重奏曲ばかり聞いてる」と。また同じ部署の大卒のIさんが突然「ロバート・クレイ・バンドのCDを持ってたら貸してくれ」というので貸したことがあるが、彼と音楽の話をしたのはそれきり。彼らは普通は誰もが知らないような音楽のことは遠慮して話題にしない。それが勤め人の処世。でも飲みの席ではカラオケがある。誰もが知る曲を歌わされる。

グリール・マーカスがマイケル・ジャクソン全盛期に「ポップ文化では商品は支配はするが統治はしない」と。彼によればポピュラー音楽は客観的市場における主観のゲームであり、主観が否定されると、すなわち「ビートルズのようにバンドを組んで歌いたい」というような双方向性が失われると、変化が何も起こらなくなり、人はバラバラに分断され数字や記号に置き換えられる。マイケルはビートルズと違って商品でしかないと批判したのだ。

カラオケとベストテン。同じころ日本製のウォークマンやオーディオ装置や電子楽器が世界を席巻したが、日本の音楽は逆にみるみるガラパゴス化を強め、奇妙なアイドルや演歌が復権。漫画的な歌詞とキャラがより前面に出、自作系でもB'zや椎名林檎や星野源のように音楽としては凡庸だがキャラ・記号性でファンを囲い込み、一種のコミュニケーション・ツール(仲間だけの排他的な)として棲み分け・既得権化。海外もジャンルが細分化し、ヒットチャート的ないわゆるポップスは形骸化が進んでいるけれども、日本人はクラシックやR&Bのようなキリスト教の基盤を持たないためかより音楽不在・人間不在の商品化が早期に進んだと考えられよう。


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