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世界の音楽 — エチオピア

2023-05-16 17:10:24 | 世界の音楽
1980年代だったか90年代に入っていたか覚えていないが、商社の駐在員的な立場の人物が「エチオピアで日本の演歌が聞かれている」と話すのをどこかのメディアで目にした。それをいま検証しようとすると、確かに音階や節回しが演歌と当地のポップスで似ている部分がありますが、演歌が当地で聞かれている(いた)という証言はないですねという冷静なところに落ち着いた様子。おそらく「演歌と似ている」「演歌のカセットを聞かせたら気に入ったみたいだ」くらいの話に尾鰭が付いて、いまだにネットの一部で言及されているのだろう。

最古の独立国の一つである同国は音楽も歴史が古く、既に6世紀には皇帝お抱えの作曲家(宗教音楽の)がいたという。民俗音楽には4種類のモードがあり、うちティジータと呼ばれるモードからTezeta(思い出の歌)という流行の曲名にもなって、同国の歌謡は1969~75年の黄金時代を迎える。75年のクーデターにより皇室が排され、ソ連の衛星国になって文化的に冬の時代となり、自由を求めて亡命する音楽家も。80~90年代、エリトリア独立に伴う政変と前後して、フランス人プロデューサーのフランシス・ファルチェト氏がマフムード・アーメッドのエチオジャズのアルバム再発に執念を燃やし、97年にそれを含むエチオピークのシリーズ再発がスタート、黄金期の音楽が各国で聞かれ始めると共に本国の音楽シーンも活気を取り戻してきているという。 



Mulatu Astatke / Yègellé Tezeta (1969 - New York-Addis-London: The Story of Ethio Jazz 1965-1975)
2006年日本公開の映画ブロークン・フラワーズ、サウンドトラックにこれを含むムラトゥ・アスタトゥケの3曲と、デング・フィーバーが彼の曲をカバーした1曲が収められ、いずれも印象的でそれがエチオピア音楽を認識した最初。ロンドンやボストンで音楽教育を受け、ジャズやラテン音楽とエチオピア伝統音楽を融合させた「エチオジャズ」の創始者で、90年代レアグルーヴの流れで再発見され、エチオピークのシリーズ再発と映画での使用により存在感の高まりを決定づけた。



Bahta Gèbrè-Heywèt / Tessassategn Eko (1970 - Ethiopiques, Vol. 8: Swinging Addis 1969-1974)
エチオピア人だけで構成された最初期のホテルバンド「Ras Band」のボーカルに18歳のとき抜擢。



Tèsfa-Maryam Kidané / Tezeta (1972 - Ethiopiques, Vol. 10: Ethiopian Blues & Ballads)


Alèmayèhu Eshèté / Telantena Zaré (1974 - Éthiopiques, Vol. 9: Alèmayèhu Eshèté 1969-1974)



Tlahoun Gèssèssè / Aykedashem Lebe (1974 - Ethiopiques, Vol. 17: Tlahoun Gèssèssè)
ティラフン・ゲッセセは同国「黄金時代」やその後も最も人気があり、ザ・ヴォイスの異名でエチオピア全土に知られた歌手。70~80年代にかけて起った飢饉の際も支援金を集め、国民から愛され、晩年は糖尿病を患い2009年に死去したが、数万人の市民が参列する国葬で讃えられた。



Mahmoud Ahmed / Erè mèla mèla (1975 - Éthiopiques, Vol. 7: Mahmoud Ahmed)



Hailu Mergia / Wede Harer Guzo (1978 - Wede Harer Guzo)
エチオジャズのキーボード奏者で80年代米国に亡命。非常にドリーミーで陶酔感のあるインスト曲で、同国の音楽の中で私が最も好む曲ですが、斬新さ・実験性は薄いかなと思う。



Aster Aweke / Hagerae (1983 - Hagerae)
アスター・アウェケはエチオピアで最も有名な歌手の1人。1981~97年の間アメリカ移住し音楽活動も行った。エチオピアとエリトリアでブルースに相当する伝統歌謡のジャンルに欧米のR&B・主流ポップをミックスした作風。



Imperial Tiger Orchestra / Lale Lale (2011 - Mercato)
ハイレセラシェ皇帝時代の帝国ボディガードバンドとモンティパイソンの「アフリカの虎」に想を得て結成されたスイスのグループ。1960~80年代のエチオピア音楽を蘇らせることを活動の柱とし、政治的迫害やエリトリア独立戦争のためヨーロッパに逃れたエチオピア人音楽家・ダンサーと共演したり南アフリカやモザンビークでもツアー演奏している。


Ukandanz / Tchuhetén Betsèmu (2016 - Awo)
伝統的なエチオピア歌謡に触発され、フランス人演奏者がエチオピア人ボーカル、アスナケ・ゲブレイスをフィーチャーして結成。ロック・ジャズ・ノイズ要素を加え、活気が戻ったアジスアベバの音楽シーンを象徴。


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