ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん7…カツオにマグロ、ウツボ 白浜で頂く南紀の地魚あれこれ

2005年09月27日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 熊野古道・大門坂の苔むした杉並木の石段を延々と登り、熊野那智大社を参拝してからふたたび那智の滝へと下る。那智山を登り下りハイキングして、心地良い疲れのおかげかクルマの中で子ども達は熟睡状態。今日の宿泊地である白浜へ向かって国道42号線を走っていると、串本を過ぎすさみの漁港あたりで、秋の短い日はとっぷりと大平洋の彼方へ沈んでしまった。勝浦の宿を出て新宮の熊野速玉大社を参拝して、那智山を巡って白浜へ。考えてみれば、今日もなかなかの強行軍である。

 ホテルに着いたらさっと温泉に入り、時間が遅いこともあり急いで夕食だ。といっても昨日の勝浦温泉「ホテル浦島」同様、格安プランのため食事が付いていない。フロントに、宿の近くで適当な店を紹介してもらうと、地元でとれた魚をつかった料理で評判の店があるとのこと。子連れでも平気ですかと聞いたところ、地元客が中心で、店の人も親切で気さくで落ち着けるよ、との返事にひと安心。クルマでほんの数分、白浜の繁華街・御幸通りの中程にある「きらく」の暖簾をくぐった。

 テーブル席について品書きを開くと、造り、焼き物、煮物などがずらりと盛りだくさんである。中でも地魚料理はかなり豊富で、カツオやマグロ、クジラやサンマのほか、クエやクツエビ、ウツボといったこの地ならではの魚が何とも興味深い。子ども達は定食や丼ものを注文、妻は地魚の刺身がたっぷり載った「熊野路どんぶり」に決めたようで、自分は地魚料理の中から「ウツボの唐揚げ」を頼んでビールを1杯。ウツボは紀伊半島から四国の土佐湾沿岸など、黒潮に面した大平洋岸で食べられており、以前高知の足摺岬にある宿で、土佐名物の皿鉢料理の中の1品で出されたことがある。紅葉おろしが添えてあり、つゆに浸してからかじりつくと、バリッとした皮の後にねっとりした食感が独特だ。白身があっさり、さっぱりと軽く、獰猛そうな見かけからは想像がつかない上品な味わいである。

 そしてモチガツオの造り、カツオのハラミなど、南紀・熊野を代表する漁獲だけありカツオ料理の豊富なこと。昨日頂いたカツオ茶漬けも品書きにある。店の人によると、この時期はちょうど戻りガツオの旬なのだそう。熊野灘沿岸の主なカツオの漁期は、カツオが北上回遊する4~6月ごろと、南下回遊する9~11月ごろ。先程クルマで近くを通ったすさみが盛んで、近海に回遊してきた魚群を狙って、日帰りや沖泊まりで漁を行っている。漁法はこの地方独特の「ケンケン釣り」。餌が豊富でカツオが集まる潮目を狙って、疑似餌を曳いて釣り上げるのだという。

 ウツボでひとしきりビールを飲んだら、この日も締めにカツオ茶漬けを頂くことにする。ここでは醤油ベースのタレに刺身が漬け込んであり、昨日の食べ方を思い出しながら1杯目は丼飯に刺身を載せカツオ丼に、2杯目は上からお茶をかけてさらりと平らげた。家でもできるかな、とタレの材料を聞いてみたら、ここでも「秘伝よ」との返事。南紀・熊野の代表的漁師料理の味の秘訣は、昨日同様、結局分からずじまい?(2004年11月1日食記)