ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん6…熊野古道散策の弁当に、紀州名物のさんまずし・めはりずし

2005年09月22日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 南紀の家族旅行2日目は勝浦温泉・ホテル浦島でのんびり入浴からスタートである。敷地内に6つある浴室のうち、昨日回りきれなかった狼煙の湯へと足を運び、子どもたちを入れてほっとひと息。高台にある露天風呂の湯舟からは勝浦港と、近海生マグロの水揚げで知られる勝浦魚市場が見下ろせた。マグロの入札は7時頃からだから、今はちょうど真っ最中だろうか。桟橋には数隻、マグロ船が停泊しているのも見える。

 この日のハイライトは、世界遺産に指定されてから人気が上がっている熊野古道の散策である。といっても子連れで急な山道を長々と歩く訳にいかず、熊野那智大社に近い大門坂を歩いて、ちょっと気分を味わうことに。お昼が近いので昼食をどうするか考えているうちに、クルマは新宮の市街へとさしかかった。そういえば新宮駅に駅弁が種類豊富に揃っていたのを思い出し、ハイキングだからお弁当もいいかも知れない、と駅の近くにクルマを停めた。駅舎内の左手にある「丸新」のショーケースをみるとあるわあるわ。どれも郷土の味覚を生かしているのがうれしい。

 実は和歌山は、日本随一の寿司処という説がある。平安時代にこの地で誕生した、魚をご飯と一緒に漬け込んで発酵させる「なれ寿司」は寿司の原形といわれ、ほかにも紀州各地で生活や風土に基づいた、多彩な寿司が存在することがその理由である。めはりずし、さんまずしは、いわば紀州の2大名物寿司だ。高菜の葉でおにぎりをくるんだめはりずしは、農作業の弁当にしていた郷土料理。数個で満腹になるように大きく握ってあり、大きく口を開け、目を見張って食べることからその名がついたという。一方さんまずしは、12月前後に熊野灘に回遊してきたサンマを握った寿司。最盛期にくらべて脂がかなり落ちているが、寿司にはそのほうが向いており、潮にもまれて身が引き締まっているためあっさりした味に仕上がるという。この店ではともに630円だが、両方が入っておかずつきの「紀州熊野路」や、椎茸飯にめはりずしなどが入った「熊野弁当」もうまそう。勝浦や太地で水揚げされるマグロやクジラにちなんだ「南紀クジラ弁当」「生鮪のまぜごはん」も並んでおり、ついつい目移りがしてしまう。

 結局、自分はさんまずしに、ほか紀州熊野路や熊野弁当も買い込んで、大門坂の上り口近くにある小公園で散策前の腹ごしらえである。さっそくさんまずしの包みを開き、ひとつ頂く。サンマの身はかなり厚く食べごたえがあり、味にしっかりとこくがある。脂がやや落ちたサンマを使っているおかげで脂の甘みは少ないが、身の味がとてもしっかりしていて、確かにこの方が酢飯に合うようだ。隣の「熊野弁当」は、醤油味の炊き込みご飯の上にシイタケ煮と錦糸玉子、そぼろの三色の具のっていて、ご飯をひと口頂くと甘辛く、シイタケの味に良く合っている。ゴマメ、ワカメの酢の物、がんもや野菜煮などおかずは豊富なのがちょっとうらやましいか。2つ入っためはりずしはシソのご飯を包んであり、爽やかな酸味が後をひく。
 
 さんまずしもめはりずしに負けず、見かけの割にご飯の量があり、結構お腹いっぱいになってしまった。ここから樹齢800年もの杉並木を眺めつつ、大門坂の苔むした石段を延々と登り、さらに熊野那智大社から青岸渡寺、那智の滝へ。腹ごなしをかねた?那智の山中の2時間ばかりのウォーキングが待っている。(2004年11月1日食記)