ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん5…酒が飲めなくても楽しい、蔵本通りの「呉市公認」屋台街

2005年09月13日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 呉への上陸記念に肉じゃがで軽く1杯飲んだら、駅前のホテルにチェックインして小休止。19時を過ぎ、すっかり暗くなったところで本腰を入れて飲みにいざ出発する。市街の中心を流れる堺川に沿って、繁華街に向けて歩いていると、楓橋のあたりで屋台が数軒並んだ一角に出くわした。おでんに焼き鳥、ラーメンといった暖簾に混じって、中にはイタリアンやアジアンフードなど、およそ屋台のイメージとはかけ離れた店も。オープンカフェ風の屋台もあり、サラリーマン以上にOLの姿が多く、結構賑わっているようだ。

 しゃれた屋台でお姉さん方に混じって飲むのもいいが、落ち着くのはやはり庶民派・赤ちょうちん。「八起」という店を選び暖簾をくぐると、豆絞りの鉢巻に、それぞれ赤シャツと青シャツの兄さんが2人が出迎えてくれた。焼酎お湯割りを注文したら、出てきたのは「いいちこ」。赤シャツのお兄さんによると、ここは父の代から25年続く店で、親子2代、兄弟と父親の3人でやっているという。広島弁での応対が、自分の郷里を思い出して何とも落ち着く。

 この蔵本通りの屋台街には15軒の屋台が軒を連ねており、珍しいことに市に届けを出している、いわば呉市の公認。それどころか、通りの整備の際に市が屋台のために道路を拡張したり、屋台専用の上下水道と電源を整備するなど、積極的に後押ししているほどだ。一時、数が減ってしまったため、2002年に新たな屋台を公募したのだが、条件が「既存の業種以外であること」。イタリア料理やアジア料理などの8軒は、その時に加わったニューフェイスなのだ。

 この店は周辺の官公庁が休みの日曜と天候が荒れている日を除き、毎日16時半頃から準備して店を出し、深夜まで営業した後に朝は5時までに何もない状態に戻す約束とか。お兄さんに、市の公認だとやりやすいでしょうと尋ねたら、でも場所代や水道代は「お上」にとられるからねと苦笑する。新しい店が入り競争が激しくなったと思ったら、「まあ15軒程度のこぢんまりした屋台街だから、仲良くやってるよ」。と余裕というかのどかというか。酒を飲まない客も利用できる屋台があるおかげで、サラリーマンのほかに女性グループやカップル、家族連れも目に付く。店ごとにお客の住み分けができているのだろう。

 この店の自慢は、屋台の中央でぐつぐつ煮えているおでん。100円からと安く、大根は真っ黒、玉子も良く味が染みていてうまい。お兄さんに、一品料理をお任せでお願いしたら、クーラーボックスから豚の耳を取り出し、表裏にパッパと塩を手際よく振り、細切りにしてネギと一緒に炒めて出された。沖縄のミミガーと違い厚手で、バリバリかじりつく感じ。独特のくせが強く、ポン酢風味のタレのおかげで食べやすい。すると「それ何ですか?」と西条から来た学生の男女5人グループが興味を示してくる。女の子たちは豚足を注文したようで、お兄さんが今度は足を取りだして包丁でバン、と割っている。さらにこの「豚耳」も追加の模様。「それだけコラーゲンを補給すれば、明日の肌は絶好調?」と話すと笑っている。

 学生が先に席を立ち、サラリーマンなど常連の姿が増えたので、こちらも締めにラーメンを注文。麺が固めのちょっと博多ラーメン風で、しょっぱ目のスープが酒の後にいい。これだけ飲み食いして3000円いかないとは、値段の安さも屋台のうれしい限り。浮いた予算で、ホテルのフロントで薦めてもらった瀬戸内料理の店ではしご酒といくか。(2005年6月17日食記)