寺尾聡の「ダイヤルM」という歌をご存知だろうか。イントロの流れる中で主人公が彼女のダイヤルを廻す。呼出音の後、「おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上・・・」
今日、学生時代の友人を訪ねた。彼は見かけによらず?優しい男で、私の母の腰が良くないと知ると、腰に効くという「マムシの薬」をくれたり、(自分の母親に頼んで)弁当を作ってきてくれたりした。そんな彼に、十年ぶり(位)に会ってみたいと思ったのだ。住所や電話番号がわからないので、何度か遊びに行ったことのある家に、直接行ってみた。本人がそこに居なくても母親に伝言するか、手紙を置いてくればいいと思いながら・・・
ところがそこに家は無く、更地になっていた。私は訪ねるのが遅くなったことを悔いた。
「~壁によりかかれば 何故か騒めく胸
気付く刻は遅く 苦い煙草を潰す~(ダイヤルMより)」
彼の連絡先を、安易に人に訊くつもりは無かった。長くご無沙汰した時間と、非礼を味わう必要が、私にはあった。