前回の記事で「次元を変える」という言葉を使いましたが、誤解されやすい言葉なので、少し補足します。「次元を変える」というと、なんだか四次元の世界や霊界に行くみたいに思われがちですが、そういうことではありません。モノの見方を変えることです。モノの見方は人によって違いますが、相対的に見るということでは共通しています。相対的ということは、モノを比較・分別することです。相対的な見方をするときには「モノがある」ということが前提になっているのですが、果たしてモノは本当にあるのでしょうか。もちろん常識や科学的な見方をすれば「ある」に決まっています。見たり触れたりできるものは「ある」と考えるのが普通です。しかしモノが個々に存在するためには、それぞれのモノに名前と本質(概念・意味)がなくてはなりません。私たちは個々のモノにはそれがあると当たり前のように認めているのですが、それを認めないという考え方もあるのです。老子の道や荘子の渾沌、禅の無やプロティノスの一者などには、モノが個々に分かれる前の状態があり、そこから見れば、モノには本質はなく、すべてがつながっているのです。このような見方が「次元(モード)を変える」ということです。しかし私たちが現実の世界で暮らすには、この次元が変わったところに居着くのではなく、再び現実の「分かれている世界」に戻らなければなりません。