気を感じながら暮らす

からだや自然について思うことなどを気ままに

沙漠の少年

2016-12-22 10:55:32 | 中国
それは何度目の旅だっただろうか…シルクロードに向かう汽車に乗っていた。窓際の補助席に座り、沙漠をぼんやりと眺めていた。恐らく数千年前とさほど変わらない凸凹の荒野が、もう十数時間も流れている。
少年が一人視界に入ったが、依然として私は絵を構成する風景の一つとしてしか捉えていなかった。冬用のジャンバーに膨らんだ身体がスローモーションのように動いた次の瞬間、私の顔に「土の塊」がぶつかった?!実際には窓があったから、直接は当たらなかったものの、ガラスを通して衝撃は伝わった。絵の中から本物が飛び出したのだ。

私のアタマは混乱した。何故、汽車に向かって「土の塊」を投げたのか…
何故こんな処に一人でいるんだ…
家は近くにあるのだろうか。何十分も歩いてきたのか…


子どもがよく川や池に小石を投げるように遊んでいたのではない。
あの頃、線路に並行して「白い線」があった。弁当の発泡スチロールのケースを、窓から投げ捨てたものが「白い線」に成っていた。
彼は自分の住む村が汚されることに対して、憤慨していたのだ。汽車に対する憧れもあったのかもしれない。

自分が小さかった頃、個人的な怒り以外に怒りはなかった。比べてこの少年の怒りのスケールの大きさよ!自分の何万倍もある汽車に一人で立ち向かう勇気は何処から出たのだろう。沙漠もまた、彼の味方だったに違いない。




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