以前、滝の写真ばかり撮っている人に会ったことがある。どの写真もとても美しかったが、具体的に何処の何滝なのかは憶えていない。その頃私はまだ渓流釣りをしていなかったので、滝は身近ではなく、遠い存在だった。渓流釣りを始めると、必然滝に出会う。沢を歩けば滝が現れる。奥多摩・川苔にある「百尋の滝」、奥多摩・海沢にある「三ツ釜の滝」「ネジレの滝」、檜原にある「払沢の滝」「天狗滝」などに行った。有名な滝には気品と存在感があるが、小さな沢にも名は無いが素晴らしい滝が幾つもある。これは現場(沢)を歩いた人間にしか味わうことのできない喜びなのである(ちょっと優越感)。
滝は、いつも同じ顔をしていない。季節によって周りの木々や草花、岩が色を変える。降雨量によって流れ落ちる水量が変わる。時期・時間によって太陽光の向きと明るさが変わる。写真家にとってそれは魅力的な被写体に違いない。
今ならば、その人と、滝について色々と話ができるかなと思っている。
写真は「御岳山・七代の滝」