「トム・ウエイツ(TOM WAITS)」を知ったのは、21歳の頃だ。友人のアキラがテープを持ってきた。以来トム・ウエイツのしわがれた声と付き合っている。
仕事から帰り、一人で部屋で飲む酒のBGMはいつもトム・ウエイツだった。北京に留学したときも、内モンゴルに旅したときもトム・ウエイツと一緒だった。
しかし私は熱狂的なファンではない。歌詞も良くは知らない。ただ極上のBGMとして聴いているだけ・・・
一番良く聴いたのが、「クロージング・タイム(上のジャケットご参照)」。A面の1曲目に針を落とすと、静かにカウントが入り、続いてピアノが鳴り出す・・・今でもここを聴いただけで一気に20年前に戻ることができる。あの頃ウイスキーを飲むのに使っていた大口グラスの手触りをまだ憶えている。「ホワイトホース」や「アーリータイムス」の香りは忘れたけど・・・
「クロージング・タイム」のジャケットは、夜を想わす黒で大きく包まれている。ピアノの鍵盤と、トムのシャツと、タバコだけが白く、個をアピールしている。ピアノは夜に溶け、トムの足も夜の黒に溶けている。トムとピアノは、万物をつくるであろう夜に包まれ、同じ存在性を保つ。トムがピアノを越えることなく控えめに観えるのは、彼がそれを望んでいたからかも知れない。
ただ一つ、気になることがある。頭上のブルーのライトがもう少し上に在った方が良いのではないかと。以前は何とも思わなかったのに・・・歳をとったのかな。
このアルバムに入っている「saving all my love for you 」、「 jersey girl」は、酒無くして聴けない名曲。