蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ピース

2011年06月04日 | 本の感想
ピース(樋口有介 中公文庫)

近所のショッピングセンターでは、3カ月に1回くらい、ハウスカードでクレジット払いすると10%オフという企画をやっている。
このセンターに大型書店があるので、本はできるだけこの時期にまとめ買いするようにしている。
「10%オフだから・・・」というのを言い訳にしてついつい買うつもりがなかった本まで買ってしまい、お店の企画にまんまとはまっているのだが、本書もレジの前のワゴンに積まれていて、お店手作りと思われるオビとPOPが良かったのでつい買ってしまった。(文庫としても2年前くらいに出版された作品で、お店が発掘したらしい)

著者の作品を読むのは久しぶり。
見かけはミステリなのだけれど、やりたいこと、いいたいことは別にある、って感じの作品が多かった記憶がある。本書もそういった感じで、秩父で起こった連続バラバラ殺人を刑事が捜査する話。

動機がキーとなっているのだが、どんなに丁寧に読んでもテキストから動機と犯人を割り出すことはできないので、ホントはミステリとはいえないだろう。
たくさんの登場人物が出てきて、それぞれ謎めいた設定が用意されているが、ほとんどが謎のまま終わってしまう。

と、書くと、中途半端な作品なのかと思われてしまうが、動機はかなり意外感があるにもかかわらずそれなりに納得がいくように説明されており、小さな謎が謎のまま(というか読書の想像に任せたというべきか)終わるのもむしろ余韻を感じさせた。

特に謎だらけの登場人物、梢路がとても魅力的だった。
また、主な舞台であるスナック「ラザロ」も「実在するなら行ってみたい」と思わせるような素敵な描写だった。
(「ラザロ」は聖書の登場人物。本書はタイトルにもたくらみがあるのだが、内容としては「ラザロ」というタイトルが似合いそうなものがあった)

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