蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

母の記憶に

2019年07月21日 | 本の感想
母の記憶に(ケン・リュウ ハヤカワミステリ)

SF短編集。中国が舞台である「烏蘇里羆」「草を結びて環を衒えん」「訴訟師と猿の王」がよかった。

「烏蘇里羆」は20世紀初頭の満州での、日本軍と羆の戦いの話で、ロボット?の馬が登場するなどスチームパンクっぽい雰囲気もあって、多少SFがかっているのだけれど、あとの2編はほぼ純粋な歴史モノ。明末に揚州で起こったという清の軍隊による虐殺事件を描いたもので、特に仲間を救おうとする遊女が主人公の「草を結びて環を衒えん」の哀しみに満ちた物語が良かった。

終末モノが好きなので、人類が自分の記憶?や意識?をコンピュータにアップロードして肉体を放棄し始めたるというディストピア風の「残されし者」も面白く読めた。

うーん、しかし「紙の動物園」のインパクトが強烈すぎて、そのレベルを期待して読むとどれも物足りなさを感じてしまうのだった。

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