蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

デッドライン仕事術

2010年02月15日 | 本の感想
デッドライン仕事術(吉越浩一郎 祥伝社新書)

仕事ができない(完成しない)から残業するのではなく、残業するから仕事ができない(完成しない)のだ、というのが本書における主張。それは、まあ、もっともだと思った。

みなで仲良く残業、一人だけ早く帰るというのは(仕事が完成していても)気がひける、というのは、日本のどんな会社でも見られることだと思う。おつきあい、ということ以外にも日本の会社の非管理職は残業手当も収入としてあてにしている、ということもあるだろう。(かといって、成果給全面導入というのも、あまりうまくいかないようだが)

すべての仕事に締め切り(デッドライン)を設定して管理することで緊張感を保つというのは仕事の効率をあげる上で重要なことだろうが、著者が経営した会社の業務が効率化した最も大きな要素は、「朝会で社長(著者)につるし上げられるのが嫌だったから」ような気がする。
著者自身が経営者は社員に嫌われて当たり前という主旨のことを書いているように、おそらくその会社では独裁的・恐怖政治的な経営が行われていたのではないか。

また、著者が自慢するようにこの会社で良好なワークライフバランスが保たれていたか(本当に社員が定時以降は自分の“ライフ”をエンジョイしていたか)は、ちょっと疑わしい。

というは、著者の会社のメンバーはおそらく全員がホワイトカラーだったと思われ、紙と鉛筆があればどんな場所でもできる仕事だろうから、定時に会社を追い出された社員は、朝会での著者の罵声を恐れて、家に仕事を持ち帰っていたことは容易に想像できるからだ。
本書の終わりあたりに著者自身が「フロシキ残業」していたと書いているのがその証拠である。

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