蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ジパング島発見記

2011年05月29日 | 本の感想
ジパング島発見記(山本兼一 集英社)

戦国期の日本に訪れたヨーロッパ人たちを主人公にした短編集。

巻末に掲げられた史料に基づいて書かれていると思うので、各々の人物の、日本や日本人への感想は、ある程度史料に書かれていることだろうと思われる。
それで各短編に共通して出てくる(日本人に対する)感想は、変な髪形(ちょん髷)と野菜と味噌汁のみの食事、礼儀正しく理知的な日本人、といったところだろうと思う。

確かにちょん髷を初めてみたらその珍妙さ(先入観を除いて見るとたしかにふざけているとしかいいようがない髪形だなあと、今更ながら思った)に驚くだろうと思うし、肉や乳製品を食べなれた人には野菜だけのおかずはつらいだろうと思える(現代日本に生きる自分にあてはめると実感できる。「カブラルの赤ワイン」の中で、イエズス会の支部長として赴任してきた、ワイン好きでちょっと不謹慎なカブラル神父が、久しぶりのワインとパンを部下の神父たちと味わう場面が、とてもリアリティがあった)。

礼儀正しくて理知的という評価は、社交辞令的な側面もあるのだろうけど、肉食で精力マンマン(日本にまでたどり着いたということは地球半周の過酷な旅を乗り越えたということなので、気力・体力が人並み外れていたにちがいない)の欧州人からみると、菜食主義?の日本人がおとなしく穏やかな人のように見えた、ということなのかもしれない。

各短編のなかで一番おもしろかったのは、「ホラ吹きピント」で、参考資料にピントの著作が紹介されているので、実在の人物のようだが、おおらかで楽観的な行動原理が魅力的だった。

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