蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

終末のフール

2009年08月03日 | 本の感想
終末のフール(伊坂幸太郎 集英社文庫)

8年後に小惑星が地球に激突し人類は滅亡する、と発表されてから5年後、と言う設定の連作集。
一時の大混乱状態から小康をとりもどした社会で暮らす人達の日常のエピソードを通して生き続けることの意義を問う。

主人公の友人は、難病の子供を抱え、自分と妻の死後の子供のケアについて悩んでいた。しかし、小惑星の到来で皆いっしょに死ぬことになって、とても幸せであり、それを「大逆転」と表現する(太陽のシール)。
こう書いても感動は伝わらないだろうけど、この、まさに逆転の発想は強く印象に残った。

人類の滅亡が予告された後も、キックボクシングジムで練習を続ける選手がいた。この選手は(滅亡予告の前に)、明日死ぬとしたら何をする?と聞かれて、変わらず練習をする、と答える。「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか」という台詞がカッコよくてしびれた(鋼鉄のウール)。
たまたま同時期に読んでいた将棋の羽生善治さんの著作「勝ち続ける力」のなかで、羽生さんが、山の中で一人隠遁生活を送ることになっても将棋の研究を続けるでしょう、という旨のことを書いていて、通底するものがあるなあ、と思った。

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