蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

僕と妻の1778話

2012年07月22日 | 本の感想
僕と妻の1778話(眉村卓 集英社文庫)

妻がガンで手術を受けて帰ってきた後、毎日原稿用紙3枚以上の短い話(昔はこういう極く短い小説をショートショートと呼んだのだけれど、最近はそういうジャンル自体が消えてしまったようなだ)を書いて妻に読んでもらうことにした、というエピソードは、新潮新書から発売されて、かなり人気になり、映画化もされたが、本書ではそのショートショートの中で著者が気にいったものや、節目の時期に書かれたものを52編選んでいる。また各話の後に著者の短い解説がついている。

各話には書いた順にNO.が振られているのだが、NO.が進むにつれて、著者の奥さんの死が近づいてきていたわけで、読み進むのが切ない気分になってきた。NO.1000を超えるあたりから、別離を意識したような話が多くなったような気がした。

眉村さんというと、私たちの年代では、司政官シリーズで有名だったけど、どれも非常に長かったような気がする(「消滅の光輪」はあまりに長くて、雑誌に連載されているときはギブアップしてしまったが、少し歳を食ってから読むと、味わい深い話だった)。
それに、病身の奥さんに毎日欠かさず小説を書くという姿勢からもわかるように、とても真面目な性格の方なのだろう。長編小説も、構成がしっかりしていて、少々息苦しさを覚えるほどだったような憶えがある。

NO.119「一号館七階」 NO.329「地下街の便所」 NO.770「シノプシス28.24」 NO.987「野望の丘」が、特によかった。

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