蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

南極料理人

2010年07月04日 | 映画の感想
南極料理人

南極観測隊のうち、昭和基地からさらに奥地の観測ポイントに1年以上滞在した人たちの生活を調理担当者の視点から描く。

数年前に原作を読んだ。原作では極地ならではの苦労や工夫が詳しく書かれていたが、映画ではあまり生かされてなくて、映画のテーマは、閉塞状況に置かれた人間の悲喜劇をソフトに描くことにあるように思えた。

「ソフトに」というところがミソで、後半、煮詰まってきた人間関係の摩擦や縺れがしだいに高まってくるが、本格的なケンカなどの騒動には発展せず、日本への帰国ですべてが解決という幕切れが用意されている。


南極観測隊の多くは本職である会社や役所から出向のような形で参加しているようだ。完全な左遷でもないが、もちろん主流派にいるわけでもない人たちの中途半端で微妙な立場。
それは会社等のみならずプライベートも同じで、1年以上家を空けるのだから、当然、混乱や不和が起こりそうである。そんなぼんやりとした不安は単調な毎日の活動でされにかきたてられる。

軍隊や刑務所など外部的拘束が強い場所では、日々の楽しみは食事のみ、ということが多いらしい。南極の奥地も似たような環境(外気温は零下50度で気軽に建物外にでられない)にある。
このような厳しい条件で、食事がまずかったらものすごくストレスがたまりそうで、それを一身に担う一人しかいない調理人もとても大変そうだ。

映画に登場するメニューにはイセエビのフライとかフルコースもあるのだが、一番うまそうだったのは、おにぎりと熱い味噌汁の組み合わせで、零下50度の野外で活動したあとに食べるシーンは本当においしそうに見えた。

あと、ラスト近くのラーメン(かんすいがなくて麺が作れず、ラーメン好きな隊長が禁断症状に襲われるが、工夫してかんすいに近いものを合成して作った)もおいしそうだった。

芸達者というイメージが強いキャストが多く、期待通りの演技を披露しているが、特にドクター役の豊原功補がとぼけた味をだしていて良かった。

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