蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

兵士に聞け 最終章

2020年02月22日 | 本の感想
兵士に聞け 最終章(杉山隆男 新潮文庫)

24年に渡って書き継がれてきた兵士シリーズの最終巻。
沖縄でスクランブル任務に係るF15のパイロットや尖閣諸島近くで早期警戒任務に就くP3Cの乗員などを描く。

私の子供のころ、スクランブルというと北海道以外考えられなかったのだが、今ではその主な発生地域は南方になっているそうで、相手の国も変わってしまった。
しかし、今も頻繁に領空近くまで飛んでくる他国の軍機はあるのだが、昔ほど報道されていないような気もする。ある種の遠慮があるのか??
あるいは、北方の空を侵すパイロットは、実戦経験豊富な腕利きが多かったはずで、実際簡単に北海道に着陸されちゃった例もあった。それに比べると南方ではまだ戦闘機の性能でもパイロットの技量でもまだ彼我の差が大きくて深刻な事態にならないからなのか?(完全に憶測にすぎないけど)

本作のあとがきにもあるけど、昔の自衛隊は著者の取材に対してとてもオープンで、自衛官本人どころか家族までインタビューに応じてくれたそうだ。
それにF15に搭乗させてくれたり、潜水艦に同乗することも認めてくれたのだが、今では取材には必ず広報がくっついてきて基地に入るのもなかなか難しくなったそうだ。
今考えるとF15も潜水艦も機密の塊みたいな場所なのだから、サービス過剰だったのかも。それほど昔の自衛隊は味方に飢えていたのかもしれない。災害派遣等で好感度をあげた?今がむしろ普通の姿なんだろう。

本シリーズは初巻からずっと読んでるけど、シリーズの出始めのころは「自衛隊びいきがすぎるのでは?」みたいな冷たい視線が多かったようにも思う。しかし、今はそんな雰囲気は全くない。自衛隊が大きく変わったとも思えないので、やはり世論が優しくなってきたんだろうなあ。

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