蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

一分間だけ

2015年01月01日 | 本の感想
一分間だけ(原田マハ 宝島社文庫)

主人公は、ファッション雑誌の編集者で、コピーライターの浩介およびゴールデンレトリバー(リラ)と、(犬が飼いやすいように)郊外で暮らしている。
毎日終電が当たり前という仕事なので、火事や犬の世話は在宅ワーカーの浩介にまかせっきり。
見かけもキャリアもさえない浩介に嫌気がさしてきたところに、担当のイケメンライターから食事などに誘われるようになり・・・という話。

リラは排泄は散歩で外出した時にするようにしつけられているので、浩介が旅行などに出ていて主人公が帰るのが遅いと家の中で粗相をしてしまうのだが、そうなると罪悪感?で家の隅でしょげかえる。
我が家で飼っている犬も(しつけているわけではなく、なんとなくそうなっているのだけど)散歩の時にしかしない。このため、この本を読んだ後は、クーンクーン鳴いていると、「もしかしてタンク一杯なのかな」なんて心配するようになってしまった。

この排泄に関するしつけもそうなんだけど、主人公のリラへの仕打ちはけっこう酷い。
おもらししてしまったリラを殴ったり本を投げつけたりするし、浩介と別居することになった時、どう考えても浩介と暮らした方がリラは幸せだろうに自分が引き受けることにしてしまったり、考え方が自己中心的なんだよなあ。
リラが癌になって死にそうになって献身的に介護するんだけど、それもなんだか、そうしている自分に陶酔しているだけみたいな・・・。
だから愛犬小説というより、キャリアに生きる女性の物語、みたいな感じだった。

「キネマの神様」もそうだったんだけど、中盤くらいまでは主人公の悪戦苦闘ぶりや心理的葛藤が、いいテンポで描かれていくのに、終盤にはいると、あまりにステレオタイプな解決であっさり終わってしまうのが残念だった。

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