蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

チョンキンマンションのボスは知っている

2021年12月17日 | 本の感想
チョンキンマンションのボスは知っている(小川さやか 春秋社)

研究(アングラ経済)のために、著者は香港のタンザニア商人のたまり場であるチョンキンマンションに滞在する。マンションといっても木賃宿と食堂などが同居する建物なのだが、そこで長年暮らすタンザニア人のカマラは、商人たちのリーダー格だった。カマラと仲良くなった著者は商人たちの実態に迫ろうとする・・・という論文っぽい?ノンフィクション。

著者は若くして有名私大の教授なのだが、専攻はタンザニア人のアングラ貿易?という(素人から見ると)激狭な分野。禁句と思いつつも、「それって何の役にたつの?」と言いたくなってしまう。

香港のタンザニア人たちは、SNSでタンザニア現地の顧客と中古車やその部品の情報をやりとりして、買付が決まれば輸出の手続きなどをして手数料(場合によってはマージンも)を取る、という商いをしている。SNSを通して販売金融的な行為をすることもある。

彼らの商売の真髄?を著者は次のように要約する(以下、246Pから引用)
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他者の事情に踏み込まず、メンバー相互の厳密なる互酬性や義務と責任を問わず、無数に増殖拡大するネットワーク間の人々がそれぞれの「ついで」にできることをする「開かれた互酬性」を基礎とすることで、気軽な助けあいを促進し、香港・中国、マカオ、タイ、ドゥバイ、アフリカ諸国にまたがる巨大なセーフティネットをつくりあげているのである。
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コメント
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