蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

赤猫異聞

2014年09月07日 | 本の感想
赤猫異聞(浅田次郎 新潮社)

明治元年、新政府の体制が固まっていない中、伝馬町の牢番はこれまで通り幕府の役人が担っていた。
伝馬町近くで大火が起こり、牢に囚われている犯罪者たちを(火事がおさまったという鎮火報が発せられたら戻ってくる(戻ってくれば罪一等減じられる)という条件で)解き放つ(これを俗に赤猫といった)。
その犯罪者たちの中に、大きな賭場の中盆で牢名主だった繁松、女郎のまとめ役だったお仙、官軍兵士を何人も切った元旗本の岩瀬七之丞がいた。重罪人と見られていた彼らを解き放つことにしたのは鍵同心・丸山小兵衛だった・・・という話。

著者の得意な、何人かの登場人物の独白体を連ねる形式。独白しない人物(本作だと丸山小兵衛)を浮き彫りにするというのもパターンで、最終章あたりでその人物の真意を明らかにしてお涙頂戴・・・となるのだが、本作では盛り上がりがイマイチだったかな・・・という感じ。
浅田さんだったら、もっと泣かせてくれなきゃ、という高い期待感があるためかもしれないが。

余談だが、ボンクラの語源は、賭場をうまくリードできない人、サイコロの目を読めない人をさす「盆暗」にある、というのを本作で初めて知った。
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