蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

べろなし

2007年08月18日 | 本の感想
べろなし(渡辺 球 講談社)

太平洋戦争末期に日本は米国とソ連の勢力の均衡地域となって、休戦が行われ、その後日本国内では60年も戦時体制が維持された、という設定の物語。

主人公の祖父は外交官で体制に批判的だったことがたたり、思想強制矯正所に入れられ、舌を切断されて話ができないようにされた上で自宅近くの神社の境内の檻に閉じ込められてしまう。
発狂したかに見えた祖父だが、落とし紙に木炭で書き付けた物語を主人公に渡す。それは国民には隠された日本と世界の情勢を暗示するものだった。主人公はこれを冊子に仕立てて近所に回覧すると想定を超えた反響が起きる・・・・

戦時体制が60年も維持された日本という設定にひかれて読んだ。
軍の支配のもと、思想や報道の自由がなく、慢性的に物資が不足し、工場で生産されるのは兵器ばかり・・・あきらかに現在の北朝鮮の見立てになっている。

「日本も一歩間違えばこうなったかも」というリアリティを追求してわけではなく、ファンタジー、パロディとしての物語にしたいのではなかったかと、想像するが、ちょっと中途半端で、テーマの追求がいまひとつ浅い感じ。意地悪くいうと子供向けの道徳おとぎ話みたいだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする