老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「関心領域」隣は何をする場所ぞ

2024-06-07 09:39:49 | 民主主義・人権
緑の豊かな庭や畑、小さいながら子供用の滑り台付きのプールまであります。そこで遊ぶ子供達、おしゃべりする女性達。映画「関心領域」は、ポーランドに住むドイツ人一家の、のどかな家庭風景を描きます。
https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/

夫のルドルフ・ヘスが持ち帰るドレスなどを、妻のヘートヴィヒ(ザンドラ・ミュラー)は女中たちにも分け与え、自分は毛皮のコートを満足気に羽織って、ポケットの口紅に気付くと、さっそく塗ってみます。

子どもたちは、なんと入れ歯をおもちゃにして遊ぶ。それらの持ち主がどうなったかなどは、何も考えないのでしょうか。

塀の向こうは映らない。ただ、最初からずっと音が聞こえます。低奏音の様な焼却炉の燃える音、時々はパンパンという銃声、悲鳴。

売り込みに来た業者は、2つの炉を使い回すと「何」の焼却に効率的…と説明し、ついうっかり「500体」と漏らします。

ヘートヴィヒの母親が泊まりに来て、広い屋敷や庭に喜びます。しかし彼女は、隣の気配にいたたまれなくなって、予定を切り上げて早朝に黙って帰ってしまいます。しかし屋敷を気に入っているヘートヴィヒは、収容所長のヘスに転勤命令が出ると彼を単身赴任させる始末。

私たちはこの家の塀の向こう、アウシュビッツ収容所で何が行われたかを歴史として知っています。この映画では最後に一瞬、靴の山と、壁に掛けられた囚人服の人々の写真が映ります。裁判で「命じられたことをしただけ」と述べたヘスの行為の結果です。そして嘔吐するヘス。

それにしても、塀の向こうで行われていたことへのヘートヴィヒの無関心さには驚きます。「無関心」は人を殺す。
しかし、もしかして見て見ぬ振り?と感じた時、私たちは自分もまたヘートヴィヒではないかと愕然とさせられます。私はどれだけ「見て見ぬ振り」をして生きて来たか、そして生きていることかと。
怖い映画です。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より

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