老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「人間の境界」境界は心の中にも

2024-05-27 09:39:37 | 民主主義・人権
2022年作の「人間の境界」は、シリアやアフガニスタンなどから戦乱を逃れて、スウェーデンを目指す難民たちの映画。ドラマです。https://transformer.co.jp/m/ningennokyoukai/

ベラルーシ政府は、難民達をポーランドとの国境へと移送します。それは難民をEU圏に送りつけて、混乱をもたらそうと利用する「人間兵器」という作戦でした。

ベラルーシ・ポーランド間の国境は、鉄条網が2列で間は緩衝地帯です。難民たちは鉄条網をくぐり抜けて、緩衝地帯を走って走って鉄条網をくぐるのです。ところがホッとした途端、ポーランド側の国境警備員に見つかり、また国境に連れ戻され、ベラルーシへと追い返される。ベラルーシ側は、ポーランドへ追い出そうとします。

そうした中で死者が出ると、互いに死体を相手側に投げ込む。臨月の妊婦でも容赦なく追い返そうとします。別の場所では緩衝地帯が森や沼地で、そこで溺れる少年も。なんという悲惨な国境でしょう。

国境警備員は、難民を「人間」とはみなさない「教育」を受けてから配置されるのでした。そんな中でも、国境を超えた人々を密かに支援するグループの存在にホッとします。

ドラマとはいえ事実をもとに、ドキュメンタリーのような3時間でした。
監督はポーランドのアグニェシュカ・ホランド。彼女の作品では1943年にナチスから地下に逃れる人々を描いた「ソハの地下水道」、ソ連時代にウクライナ地方の作物を取り上げたために起きた飢餓を描いた「赤い闇‐スターリンの冷たい大地で」を観ています。

ところで、日本政府の2023年の難民認定はわずか303人で、不認定が7627人です。難民の少なさは、世界から非難されているとか。

難民認定には「母国に帰れば身に危険が及ぶことを、客観的証拠に基づいて証明しなければならない」「証拠は日本語に翻訳して提出しなければならない」という条件が付いているからです。「身に危険が及ぶ客観的証拠」を自国から持ち出せる? 今まで使っていない「日本語で」それを表現できる難民がどのくらいいるでしょう。

「難民」なんて全く縁の無いような日常ですが、人間として生きる権利、住まう権利を、日本政府が損なうことが無いように、私たちにもできることがあるのかもしれないと考えさせられた映画でした。 

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より

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