老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「コモンの「自治」論」(斎藤幸平+松本卓也=編)を読んで

2023-09-27 15:42:12 | 民主主義・人権
近年の西側諸国のイデオロギーであり、日本でも自民党政治が主導する「新自由主義」あるいは「行き過ぎた資本主義」は、人々が生きるために必要不可欠な水や電力、住宅、公共交通機関、食料、医療・教育・介護などの「基本資源<コモン>」を解体し、財力や権力を持った一部の者たちによって商品化・私有化することを許し、結果、社会全体に環境危機や経済格差を齎している。著書「人新生の「資本論」」の中で斎藤幸平氏が、こう警鐘を鳴らしたのは、2020年9月のことでした。

それから3年、コロナ禍、戦争、インフレ、異常気象など、危機的状況は複合化、深刻化し、テレビでは毎日のように「(コロナなので、猛暑なので、、)外出を控えるように」とか、「(線状降水帯発生のため、北朝鮮がミサイル発射したので、、)命を守る行動を」などの警告がアナウンスされ、私たちは、いつの間にか、「どうしたら、今日明日を無事生きていけるか」を、考え行動するようになっています。

また、物価・税金・社会保障費の値上げ、年金カットや低賃金、学校給食の供給会社や市内バス運営会社、訪問介護事業者の撤退、等々の社会インフラの消滅による生き辛さに加えて、ここに来て、GAFAと言われる巨大IT企業によるデータの収集、専有化が、圧倒的な勢いで私たちの内面に介在し、思考の自律性を奪い始めています。

私たちの命や暮らしを守るはずの政府は、事態の打開を図るのではなく、むしろ、危機に乗じて「緊急事態」対応と称する強権発動を画策し、あるいは、収集されたデータを権力保持や国民統合に利用するなど、トップダウン型政治に向かおうとしています。

こうした状況下、私たちに「希望」は残されているのでしょうか。

この問いに応えようと、今年8月に上梓されたのが、斎藤幸平氏+松本卓也氏編の「コモンの「自治」論」(集英社)です。

この本は、斎藤氏が説く<コモン>―社会的に人々に共有され、管理されるべき富―の議論の中で、<コモン>とは「自治」のことであるー(by松本卓也氏)と認識した学者や精神科医、岸本聡子杉並区長らが、「自治研究会」なる研究会の中で、問題点や重要なポイントについて議論を重ね、まとめ上げたものであり、その要旨は、斎藤氏の以下の言葉でまとめられています。

『資本主義は一握りの人々に富を集中させ、私たちを無力な消費者にすることで、「自治」の実現を妨げてきました。それに対抗しようとした、二十世紀型の社会主義も福祉国家も市民たちの「自治」を実現できなかった。・・・
 本章で提示しようとしたのは、垂直型の政治や運動に代わる新しい形の参加型「自治」に向けた、二十一世紀の理論と実践の可能性です。
 そのカギとなるのが、万人が<コモン>の再生に関与していく民主的なプロジェクトです。・・・
 そこには二十世紀型の前衛党はいりません。<コモン>が可能にする平等をもとにして、市民が積極的に参加しながら、社会を共につくっていけばいいのです。・・・
 リーダーフルな(リーダーは一人ではなくリーダー的存在が大勢いる)マルチチュード(グローバル資本主義の支配下にあるすべての人々、多種多様な人間の集合体)によるみんなの「自治」は、組織化や制度化を絶えず反省しつつ、新しい社会を生み出していきます。
・・・
 その動きは、最初は小さくてもかまいません。3.5%の人間がリーダーフルな存在になれば、今私たちが想像するよりもずっと大きく、この社会は変わるでしょう。その意味で、「<コモン>の自治」こそが「希望なき時代の希望」なのです。』

猛暑もようやく去った今、私も「どうやって無事生き延びるか」の内向きの思考からもう一度抜け出して、あちこちで生まれている<コモン>の再生、「自治」の実践という「希望」の一端を、どうやって共に担っていけるかを、仲間と共に考えてみたいと思います。

「護憲+コラム」より
笹井明子

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