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世界沸騰時代に対処するキーワード(1)「C3植物」対「C4植物」

2023-11-08 16:08:02 | 環境問題
「地球温暖化」危機というステージを飛び越え、次のステージ「地球沸騰化」時代に入ったとする話題が、今夏始まった。いよいよ「我々」は追い詰められたといえる。

ここで言う「我々」には、人だけが含まれる訳ではない。話題のクマも、その他すべての動物も含まれるし、蚊や蝶らの昆虫も、そして全ての植物も全ての微生物も含まれる。

即ち、地球沸騰化時代に突入するまで環境悪化を推し進め、放置してきた人の愚かさを、理不尽にも被害のみを受けている全ての動植物と全ての環境をも「おもんばかる」意識を、人が持つことが大切な姿勢と思う。

かかる観点から、「地球沸騰化」時代に対処する際に心得ておきたいキーワードを取り上げ、どちらの道を選ぶのが賢明かの選択に役立つ情報を提供してみたいと思う。

先ず、今回は「C3植物」と「C4植物」という言葉を通して、「地球沸騰化」時代における賢い農業政策選択の一視点を提供してみたい。

植物が光合成を行い、大気中の炭酸ガスを吸収し酸素を吐き出し、糖・脂肪・蛋白質等の様々な栄養素を作りだし、人を含め全ての光合成機能を持たない生物に対する食料を提供していることは、周知のことである。そして植物の持っているこの炭酸ガス吸収機能が、産業革命以降、主としてグローバルノースが化石燃料に依存する経済を拡大し世界支配を目指したことで過大に発生させた炭酸ガスの極めて有効な吸収装置になっていると捉えられていることも、周知のことである。

簡単に光合成のことをおさらいしてみる。

光合成の解明はカルビンとベンソンらの研究(1950年)から始まる。カルビン-ベンソン回路として知られる回路の存在を彼らは突き止め、光合成の機構が解明された。この回路は炭酸ガスCO2の同化吸収機構(植物の持つ炭酸同化作用とも言う)であり、グルコースやでんぷん、そして有機酸・脂肪やたんぱく質等が作りだされる出発の回路である。

このカルビン-ベンソン回路は植物の葉の維管束鞘細胞に存在しており、この回路の最初の段階を触媒する酵素(RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、Rubiscoと呼ぶ)がそこに存在し、取り込んだ炭酸ガスCO2を、5つの炭素を持つ化合物のリブロース1,5-2リン酸(RuBPと略す)に結合させる働きを行っている。

そして一旦6つの炭素を持つ中間体を経由し、3つの炭素を持つ化合物のグリセロアルデヒド-3リン酸(3PGと略す)2分子へと変わる。この3PGと略される3つの炭素を持つ化合物が回路の最初の段階で作られることから、この回路をC3回路と呼び、この回路を持つ植物群を「C3植物」と呼ぶ。

米や小麦そして大豆などの主要な農作物と陸上植物の大半がこの「C3植物」である。

カルビンとベンソンらの研究によりC3回路とC3植物の存在が発見され、植物の持つ炭酸同化作用は明らかになったが、その後彼らの研究に触発される形で、世界各国でいろいろな植物の光合成の追試確認研究が行なわれた。その過程でC3回路とは別種の回路、C3植物とは異なる植物の存在が明らかになった。

それが、ハワイにおけるサトウキビを用いた研究であり、「C4植物」と言われる一群の植物の存在が明らかにされ、注目されるきっかけとなった。

「C3植物」との違いであるが、まずその「C4植物」の持つ「C4回路」の活動場所が「C3回路」の場所と異なる点が第一の特徴である。

即ち「C3植物」の「C3回路」は葉の維管束鞘細胞に存在すると述べたが、「C4植物」の「C4回路」の活動する場所は、葉の維管束鞘細胞に囲まれる形で存在している葉肉細胞においてである。

そして第二の違いは、葉肉細胞中に存在する酵素の働きにより、3つの炭素からなる化合物のホスホエノールピルビン酸が炭酸ガスCO2と結合し、4つの炭素からなる化合物オキサロサクサンが出来ることが異なる点である。即ち3炭素化合物が炭酸ガスを吸収して4炭素化合物に替わることでサイクルが始まることから、この一群の植物が「C4植物」と名付けられた謂れ、なのである。

4つの炭素を持つオキサロサクサンはリンゴ酸に変換され、その後、変換されたリンゴ酸は葉肉細胞から維管束鞘細胞に送られる。維管束鞘細胞でリンゴ酸(4炭素)はピルビン酸(3炭素)に戻され、その際生じる炭酸ガスCO2は既に説明した維管束鞘細胞に存在する「C3回路」に取り込まれ、以降「C3植物」で起こるのと同じ工程で各種有用栄養成分が作られていくことになる。

即ち、この葉肉細胞に存在する「C4回路」は、「C3植物」には存在していない別ルートの炭酸ガス吸収装置・濃縮装置とも言えるシステムであり、何らかの状況により炭酸ガスの利用が困難になった場合、2つのルートの炭酸ガス吸収装置を持つ「C4植物」の方が1つのルートしか持たない「C3植物」より有利になるとの予測が出てくる。この点が地球「沸騰化」時代の農業施策を考える際のポイントになる「C3植物」と「C4植物」との違いである。

以下「C3植物」と「C4 植物」の違いについて焦点を当てている文献を基に説明を進めていく。
  参考文献:植物生理学II 第9回講義(光呼吸とC4光合成)
       北海道大学農学部 環境ストレスと植物の反応
    他にも多くの文献がネット上で見ることが出来ます。

1. 炭酸ガスの有効利用性については「C4植物」の方が、「C3植物」と同じ機構がある上に、加えて炭酸ガス濃縮装置C4回路という特別装置を持っていることから優秀と言える。但し、C4回路を回転させるためには高エネルギー物質のアデノシン3リン酸ATPが余計に必要とされ、エネルギーを余分に必要とするという欠点が存在している。

2. C3植物の説明で、酵素Rubiscoが炭酸ガスCO2をC3回路に取り込む反応を触媒することから回路のサイクルがはじまると説明した。この酵素Rubiscoは炭酸ガスだけでなく、大気中のO2とも親和性があることが知られており、O2が酵素Rubiscoにより取り込まれると「光呼吸」と呼ばれる反応がスタートすることになり、植物組織内の有機化合物が酸化燃焼されエネルギーが発生利用されるとともに、炭酸ガスCO2が逆に発生することになる。いわばCO2とO2とのいずれが酵素Rubiscoに取り込まれるかは植物の置かれている環境に左右されることになる。よって現在の炭酸ガスCO2が過大に存在している地球沸騰化の局面では、C3植物は有利な環境とも言える。
 しかし炭酸ガスが過大な環境では必然的に気温が高くなっているわけで、この様な環境ではC3植物の光合成活動は抑制される、ということも知られている。それが次の3.の項目である。

3.「C3植物」と「C4植物」との決定的な違いが紹介されている。それによると
  -「C3植物」が有利な環境:湿潤・低温・日射が弱い方が好ましい
  -「C4植物」が有利な環境:乾燥・高温・日射が強くても良い
ここで日射が強く、高温で乾燥した環境が、「C3植物」に不利になる理由が説明されている。
 高温・乾燥(必然的に日射も強い)になると、植物は「葉の気孔」からの水分の蒸散を防ぐために「気孔」を閉じる方向になり、従って炭酸ガスを取り込むことが困難な方向になる。よって「C3植物」は光合成能力が低下し、高温乾燥条件下で萎れていくことになる。一方、「C4植物」は気孔の閉鎖傾向による炭酸ガス摂取力が低下するものの、それに打ち勝つC4回路という特別炭酸ガス濃縮装置を持っていることから生育が妨げられないという特徴を持っていることになる。

結論として、現在の地球「沸騰化」時代に賢く対処するには、米や小麦といった乾燥・高温・干ばつといった環境に弱い「C3植物」に偏った農業施策だけの遂行では、世界の食料安全保障は不安定な状況に導かれていく恐れが高いと言え、従って合わせてアワ・ヒエ・ソルガムといった「C4植物」の栽培を推進する農業政策が強く望まれることになる、との考えが出てくる訳です。今年も残す所2カ月を切ったが、2023年度が国際Millets年と国連が唱道している理由は、この辺りにあると言えます。

代表的な「C4植物」であるMilletsにはアワやヒエ・キビがあり、ほかにトウモロコシ・ソルガム・サトウキビ・ハトムギ等がある。

アワ・ヒエ・キビの世界の生産量は3,000から4,000万トンと言われ、国祭Millets年に関わらずそれほど拡大は起こっていないように見える。但しアフリカでは緑の革命(Green Revolution:GR)型の種子企業・穀物メジャー・肥料企業・農薬企業が先導する工業型農業が主流の状況下にあるが、その弊害が指摘され、それに代わる農業(Agroecologyという)が復興しつつある状況にあり、Milletsの生産量がアフリカで拡大する兆候が指摘されている。※Agroecologyについては次回に触れる予定。

ソルガムの世界生産量はもう少し多く6,000万トン程という。但し利用のされ方はどちらも家畜の飼料が大半で、最近バイオエネルギー関連での利用が注目されているという。人が食する場面では、美容にこだわる人や健康を重視する人が少し存在して食べているのが現状と思われる。

いずれにしてもMilletsとソルガム合わせても1億トン程度で、米・小麦・トウモロコシという主要穀物の生産量の27億トン程と比べると4%にも満たない、少ない状況である。

日本ではアワ・ヒエ・キビは現在年に200トンが流通しているだけでほぼ全てが飼料利用である。しかし文明開化以前の日本ではコメと共に主食の地位を占めていたという歴史がある。

今回「C3植物」対「C4植物」というテーマで「C4植物」の優秀性を示してきた。ことに地球「沸騰化」と言われる時代には、この「C4植物」の優秀性ということに着目することは、時代に対処していく上で重要なモノサシになると思う。

大気中の炭酸ガス量は産業革命前の250ppm程度だったのが、今や400ppmを越え、更に高まっていくことが強く予測され、そして今年が世界Millets年ということの重みに思いをはせ、賢明な対処策を世界が・国がそして個人個人が考えていくことが望まれると思う。

因みにここ数カ月アワと押し麦を主体に米は4分の1位に減らした食生活に替えて暮らしている。結構、ヨサげな感じで暮らせています。そして「エゴマ」の粒を毎朝7g程度すりつぶして食しています。こちらはDHAやEPAと同等の不飽和必須脂肪酸の摂取を狙っての食生活の智恵です。

更に、大豆は納豆(納豆は大切な食品です)の形で日に一個、それ以外の豆の摂取目的で「ひよこ豆」の煮たものを100g程度毎日食べています。大豆には大豆油が多く含まれており、農水省推奨の一日100gの豆をすべて大豆の形で食べると油分を多く取りすぎることになり、それを気にしての油分の少ない「ひよこ豆」を採用しているわけです。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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