life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「反社会学講座」(著:パオロ・マッツァリーノ)

2012-10-02 21:55:27 | 【書物】1点集中型
 しばら――く「読みたい本リスト」の中には入っていたんだけど、あっため期間が長すぎて、何をきっかけに読みたいと思ったんだったか忘れてしまった(笑)。

 ゼロ年代の本なので、個々のネタは確かに一昔近く前の話ではある。が、社会学が社会を捉えるときの切り口(というか手口というか)自体は普遍であるはずなので、なるほどと思わされる点が多々ある。全体として「社会学って結局なんなの?」という疑問を面白おかしく解説してもらったという感じ。
 なので、読んでみた結果「もっと早く読めばよかった~」と思った。面白い。読みやすい。裏表紙の煽り文句にも「学問とエンターテインメントとお笑いを融合させ」とある。まさにその通りであった。くだらないギャグを随所に織り交ぜつつ、恣意的に導かれる社会学の研究結果をおちょくりまくっている。

 本文中、「社会学や社会学者を批判しているにもかかわらず、結果的に本書は、非常に優れた社会学の入門書になっている可能性があります」という「注意」書きがある。少年の凶悪犯罪、少子化、年金などなどにおいて世間(社会)に定着している思い込みをことごとく、データという根拠によってひっくり返す。
 端的に言うと「御都合主義的社会学へのツッコミ」なのであろう。つまり、この本にあるようなツッコミに耐えうるほどの検証が施されていなければ、それは社会を正しく(「正しく」という表現も結局、厳密には正しくはないのかもしれない)見た結果導き出された答えだとは言えないんじゃないの、という話だと思う。疑え、ただし前向きに。

 「人は正しさではなく、楽しさで動くもの」
 「『自立している』人など、どこにもいやしません」


 この本で特に印象に残ったのがこの2つの言葉で、前者は環境保護運動の高まりについて。後者は「自立とは何か」を考えたときに導き出された著者の結論を指している。どちらも、著者の言ってることを最初から最後まで通して読むと、非常にわかりやすい理屈である。
 他人に迷惑をかけずに生きることはできないから、自立などありえない。が、決して、一生怠けてろと言ってるわけではないことは、肝に銘じておくべきかと思う。この結論の都合のいい面だけ見ちゃうと、やっぱ怠け心が出そうな気がするんで(笑)。「努力するのは宝くじを買うのと同じ」。たとえは極端だが、0か100かの結果だけを求めるか、プロセスから何かが得られればいいと思うか。要するにそういったことを言っているんだろう。

 一種ベタベタなノリで容赦なく社会常識(と化している幻想)に突っ込んでいく雰囲気が楽しかったので、続編も読みたいなーと思っている。
 余談だが、「この表紙イラストの雰囲気、どこかで見覚えが……」と思ったらなんのことはない、懐かしの吉田戦車だった。