デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



オルテガ(桑名一博訳)『オルテガ著作集2「大衆の反逆」』(白水社)読了。

この本の内容で論じられている現代の大衆は、単なるバーナム効果だと斬って捨てられるようなものではあるまい。
読んでいてこんなに身につまされる思いになる本はひさしぶりだ。過去の時代にもオルテガのいう凡俗な人間は存在していたろうが、現代の人間の特徴をよく言い当てているな、と思うし、何事にも怠惰な私にとっては本のどの箇所を読んでも非常に厳しく感じられる内容だった。

 思想とは、真理に対する王手である。

とは記述の中でも有名な言葉であるが、「この本の言葉は君の精神にとって詰めろである」といわんばかりだ。
とくに歴史的理性を軽んじ自分たちの時代が最高の時代であると信じきっている感覚や、凡俗な人間が他人を考慮しない習慣に染まってしまっていることや、注意してさえいれば分かるであろう物を創造したすぐれた天才的な努力を己に科した人について思いを馳せることなく文明の利器を使いこなすことだけは一丁前な大衆の姿、自分の自覚していないところで自分のエゴばかり強調し共存への意志をおくびにも出さない人、そういった凡俗な人間が現代に多くなっていることを自覚・自認するのは辛い。
もちろん共感することもある。「貴族」という称号だけで自ら努力することのない2世や2代目は凡俗な人間であり精神的に「貴族」ではなく、オルテガのいう自分自身に多くを科して権利を勝ち取った「貴族」の概念は納得したし、この考え方は現代だからこそ貴重だと思う。
本の内容に関して、ピリッとしたことを書きたい衝動が失せることはない。読了から数ヶ月、その間、感想をまとめようとする度に、あれにも触れたいこれにも触れたいとメモばかり多くなり結局何もまとまらない。でも本文の付箋をした箇所だけは読み返しそれが癖になる、いい意味で始末に負えない本だ。


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