以前も書いたかもしれないが、私は書籍を購入するにあたっては、一度読んで再読するであろう、また再読したいなと思った本や、旅行先での二度と手に入らない好みの絵画の画集といった貴重本かどうかを、よくよく考えてから購入の判断を下す。正直自分でも神経質というか偏屈なまでに、本を手にしたときの購入の衝動を抑えてしまうところがある。ただの吝嗇かもしれないが(笑)。
ただ、先日の古本祭りで、以前なら猛烈に欲しくてたまらなかった本であったのに、見開いてみると「はたしてこの作品だったろうか?」と自分の記憶を疑ってしまったことがあったのは、自分でも意外であった。本(古本祭りで置いてあったのはペーパーバック)は、正確にはその本に所収の短い作品が欲しかったのだが、冒頭の数行を読んで、どういうわけか私はかつてその作品に無闇矢鱈に感動した記憶(印象)自体が揺らいだ気がした。タイトルも登場人物も翻訳者も同じだし、同じはずだ。でも「異なるもの」のように感じた。
で、私の小さい書棚に並べるのはやめておいたのだが、実のところ今、ハードカバーの分で内容が同じものを図書館から借りて手元にある。図書館で借りれたのは、正確なタイトルを古本祭りで再確認できたからなのであるが、本は何年も書庫に埋もれていたのを手にしたような感じである。作品に対しての「異なるもの」のような感覚は未だに強い。わずかな可能性として再読してまた欲しくなれば古本で再会したくなるかもしれないが、そうなった時には二度とめぐりあえないかもしれない。
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