僕はアルコール類は大好きだけれど、一つだけ苦手なものがあった。ワインだ。ワインを飲むと、その夜や翌日に気分が悪くなる傾向があったのだ。「ワインは自分の体質に合わないんだ~」と思い、なるべく避けるようにしてきた。
ところが先日、阿川佐和子さんの「残るは食欲」というエッセイを読んでいたらこんなくだりがあった→「二十代の頃、ワインを飲むと、そのあと必ずといっていいほど気分が悪くなり、夜中にさんざん苦しめられた。ワインは怖い。悪酔いする」←と。 おぉ、僕と同じではないか。 さァ、それで…?
…阿川さんは、酒飲みの友だちから「それは安物のワインだからさ」と言われてしまう。そこで、勧められるまま高級ワインを飲んでみた。すると、とてもおいしく、気分も悪くならなかったそうである。ということは、つまり…僕も安ワインばかり飲んで気分が悪くなっていたわけかぁ、と納得した。
しかし、阿川さんはその話に続けて、「ある時、安いワインであっても上質のものがあることを知人から教えてもらった」という。それは、オーストラリアの『イエローテイル』というワインだった。お値段はコンビニで千円、スーパーでは800円ちょっとで売っていたというその安いワインを、阿川さんは飲んでみて、「あらま、しっかりしていておいしいわい」と感嘆した…ということである。
それを読んだ僕は、「イエローテイルねぇ…」とその名前を覚えておき、スーパーへ行った時、ワイン売り場に立ち寄った。ズラッと並ぶみんな同じように見えるワインのひとつひとつを念入りに探していくうちに「おっ、これだ!」と、ラベルに黄色いカンガルーのイラストが描かれているワインを見つけた。まさしくそれがイエローテイルだった。
もちろん、ためらうことなくカゴに入れた。そうして家に持ち帰り、飲んでみると、う~ん、これはまた、うっとりするほど濃厚で味わい深いワインだった。おまけに、あとから気分が悪くなることもなかったのである。すぐに阿川さん同様、イエローテイルのファンになった。
読書というのは、こんな“実益”ももたらしてくれるんだなぁ…と、つくづく。